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第550回 ─ 終わらない〈ロンバケ〉

連載
NEW OPUSコラム
公開
2009/11/04   18:00
ソース
『bounce』 315号(2009/10/25)
テキスト
文/久保田 泰平

女性シンガーが華麗に彩る大瀧詠一の名作

 クリアかつ奥深いサウンド・テクスチャーは、ハードの進化などによってハイファイ志向になっていたリスナーの耳を潤わせ、醸し出す清涼感やアートワークがリゾート・ブームともリンクする――大滝詠一の81年作『A LONG V・A・C・A・T・I・O・N』は80年代にこよなく愛された作品なのだが、そのクォリティー、作品から滲み出る音楽家としてのアティテュードは、発表から30年近く経ったいまでも有効だ。

『A LONG V・A・C・A・T・I・O・N From Ladies』では、女性アーティストによってこの作品を丸ごとカヴァー。弦楽アレンジで飾られた大貫妙子“君は天然色”に始まり、持ち前のシブ声でジャズ風に仕立てた金子マリ“Velvet Motel”、穏やかなエレクトロニカを奏でる原田郁子“スピーチ・バルーン”、哀切なメロディーをコケティッシュに包み込む鈴木祥子“さらばシベリア鉄道”など、それぞれの〈女性らしさ〉をふんだんに盛り込んで捧げられた名演たちを収録。そのオリジナリティーにはもちろん感心させられるが、同時にオリジナルが持つ普遍性も改めて思い知らされる。