素敵な〈歌〉を際立たせたカヴァーがてんこ盛り!
『くるり鶏びゅ~と』……なんてちょっと脱力気味なタイトルの、言わずもがなくるりのトリビュート盤が登場! 思えば彼らはバンド名が示すかのように絶えず音楽性を大胆に変化させ、同時代&後進のミュージシャンに大きな刺激を与えてきた。そんなアーティストは最近の日本には稀少であり、ゆえにトリビュート盤にも期待を寄せていたわけだが、いざ聴いてみると――予想以上に素晴らしい!
まず、anonymassによる管弦楽器と電子音を織り交ぜたチェンバー・ポップ版“赤い電車”で出発進行! 続く、鋭くもナイーヴなサウンドで原曲のセンティメントを抽出したandymoriの“ロックンロール”や、エレクトロ・ポップに変換された木村カエラ“言葉はさんかく こころは四角”はとても瑞々しい仕上がりだ。また、岸田繁も絶賛するMASS OF THE FERMENTING DREGSは隠れた名曲“飴色の部屋”をラウドに掻き鳴らし、9mm Parabellum Bulletはガレージ・ロックな“青い空”を完コピしつつ随所に激烈なメタル成分を注入。さらに、くるり主宰レーベル=NOISE McCARTNEYが輩出したピアニストの世武裕子が“東京”に込めた生々しい情感にも驚いた。また、彼らの音楽に共感する先輩ミュージシャンも参加し、奥田民生が飄々と“ばらの花”を歌えば、過去に同曲を自身の作品でカヴァーしていた矢野顕子がピアノで“Baby I Love You”を柔らかく弾き語る。そして、某アパレル・メーカーのキャンペーン・ソングをくるりと共作していることでも話題のユーミンは、“春風”を彼女の原点を思わせるウェルメイドなポップスに改変した――このように通して聴くと、どの曲でも〈珠玉〉と呼ぶに相応しいメロディーが鮮やかに響く。やっぱりくるりは本質的に〈歌〉のバンドなのだと改めて認識させられた。それも、とびきり最高の。
▼トリビュート盤に参加したアーティストの作品を一部紹介。