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第545回 ─ PREFAB SPROUT

連載
NEW OPUSコラム
公開
2009/10/21   18:00
ソース
『bounce』 315号(2009/10/25)
テキスト
文/北爪 啓之

その美しいメロディーは時空を超えて……


  堂々たるロマンティシズム。8年の時を経てついに上梓されたプリファブ・スプラウトのニュー・アルバム『Let's Change The World With Music』は、稀代のポップ職人、パディ・マクアルーンの完全なるソロ・ワークとして仕上げられた。序盤の数曲では一見らしからぬラップや4つ打ちも飛び出すが、それも束の間、後はただただパディのジェントリーな歌声に導かれるように、洗練を極めたメロディーに次ぐメロディーの奔流が最後まで押し寄せて止まない。

 そもそも本作は92年にリリースが予定されていたのだが、紆余曲折を経た挙げ句、17年目にしてようやく完成に至ったという経緯を持つ。ところが、ここに散りばめられた煌めくロマンの香気を纏った旋律は、17年の空白どころか、まるで半世紀前の銀幕を彩った挿入歌のようでもあり、半世紀後を賑わす惑星旅行のBGMのようにも響いて心を打つ。サウンドの表層がどうであれ、この驚くべきタイムレス・メロディーは決して錆び付くことがない。頼もしいほどに直球な表題も含め、楽曲至上主義を貫くパディの面目躍如たる畢生の名盤、と断言したくなる出来だ。

 また、新作と同時に紙ジャケ仕様でカタログ4枚もリイシューされたばかり。ネオアコやAORなどという偏狭なジャンル分けに収まらない、唯一無二のプリファブ・ポップ世界を、ぜひこの機会に再確認してほしい。

▼このたびリイシューされたプリファブ・スプラウトのアルバムを紹介。