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第34回 ─ 〈ホッピーのナカ〉

連載
Bar YAMAGA
公開
2009/10/14   18:00
更新
2009/10/14   18:02
ソース
『bounce』 314号(2009/9/25)
テキスト
文/〈Bar YAMAGA〉のバーテン

憧れのアーティストたちといつもの酒場で出くわして――武藤昭平、勝手に深夜がれの妄想話はまだまだ続く……

 29時。怒髪天の増子直純、エルヴィス・コステロ、ミック・ジャガー、そして俺、武藤昭平で飲んでいる。たったいまチキンラーメンの早食い対決に負けたミックが、ホッピーを一気飲みしたところだ。そして俺「あ、すいません! ホッピーの〈ナカ〉おかわり!」。「ムトウ、〈ナカ〉ってなんだ?」と訊くミックに俺が答える。「ああ、焼酎ですよ」「えっ!? いまの飲み物にはアルコールが入っていたのか?」。するとコステロ「そうそう、酒やで、酒! 飲まなアカンて、ミックはん」。渋い顔をしながらミックがぼやいた。「酒は止めたかったのに……。それにしても凄い味がしたな。ホッピーだっけ? 生まれて初めて飲んだよ」。笑いながら増子がミックに言う。「庶民の飲み物なの、ミック! 贅沢は言っちゃダメだからね。でもホッピーを飲むミック・ジャガーってのもオツだよな。ナハハハ!」「よ~し、そしたら次は何のゲームにします?」。コステロの問いに増子が答える。「山手線ゲームとかでいいんじゃねえか」「おお、いいっすねえ」。増子の提案に頷く俺とコステロ。だが、ミックがまた渋い顔で口を挿んだ。「ヤマノテセン? それは何だい?」。するとコステロがあっさりと返す。「やってみればわかりまんがな。とりあえずやりましょ。で、負けたらホッピー一気で!」。

 とりあえず4人で山手線ゲームをやることに。順番は増子、俺、コステロ、ミックとなった。まず増子「よし、いくぞ! レーッツレッツゴー! パンパン(手拍子)渋谷!」。俺「パンパン(手拍子)新宿!」。コステロ「パンパン(手拍子)日暮里!」。ミック「……」。「はいっ、アウト~!」。コステロの容赦ないダメ出しが飛ぶ。「さあさあ、ミックはん、また一気やで。ホッピー!」「でも、よくルールがわからなかったし」。そんなミックの嘆きを無視して、ホッピーを突き出すコステロ。「ま、ルールやからなあ。とりあえず飲まんといかんでしょう、ミックはん!」。渋々ホッピーを一気飲みするミック・ジャガー。2杯目を飲み終えたミックが一言。「そてにしても、この飲み物はホントに凄い味がするな~。薬っぽいというか」「激安の焼酎を使ってるんすかねえ」。俺はそう答えながらミックの顔を覗き込む。ミックの顔はすでに真っ赤だった。

……武藤昭平、あくまでも妄想の話。

深夜の妄想盤

THE ROLLING STONES 『Beggars Banquet』 Decca/Abkco(1968)
USルーツ音楽への憧れを胸いっぱいに抱えながら我流のスタイルを確立した、泥臭くて無骨で最高にエネルギッシュな大傑作です。酒も○○○もガボガボ呑んでいた当時のミックさん。そのヒリヒリとした危険な雰囲気に、いまも私は酔わされっぱなしですよ。

VARIOUS ARTISTS 『酒魂~Drunkers Song~』 徳間ジャパン
怒髪天 “ビール・オア・ダイ”で始まる本作は、吉幾三やA.R.B.らの酒にまつわる名曲をちゃんぽんしたコンピ。増子さんにコレを流せと言われたんですが、そもそもウチはバーなんですよね。本当はホッピーよりもテキーラ・サンライズとかを飲んでいただきたいのに……。

PROFILE

武藤昭平
ジャズとパンクを融合させたオリジナルなサウンドで人気の伊達男音楽集団、勝手にしやがれのドラマー/ヴォーカリスト。DVD「勝手 at 九段 ~2008.12.11. you don't know what "LIFE IS..." at 九段会館大ホール~」や、タワレコ30周年を記念したファースト・ソロ・シングル“至福の空 ~NO MUSIC, NO LIFE.~”(tearbridge)が大好評リリース中。10月18日(土)には代官山LOOPで武藤昭平withウエノコウジと七尾旅人の2マンライヴを行うとのこと。最新情報は〈www.katteni-shiyagare.com〉で!!