グディングス・リナが世界の〈音楽〉と〈料理〉のお皿2枚使いで贈る、〈音食同源〉コラム!!

インターネットもCDショップも情報/物量で溢れ返っている時代に、いわゆる〈ワールド・ミュージック〉に目新しさだの珍しさだのを見い出すような純朴さはもうなくなってしまった。とすれば、ここ以外のどこかから聴こえてくる音楽、非G8諸国から鳴らされる音楽にいったい何を期待して、わたしたちはそれらの音盤に針を落とすのだろう。ミュージシャンが曲を作るにあたって、もしそこにアレンジ用のカラー・パレットのようなものがあったとしたら、レゲエがロックと同じように標準装備の赤青黄色の座につく時代なのだ。 あ、隣の子も同じの使ってる!
さて、それでもパレットにない色を探して、たまには寒いところに行ってみよう。アイスランドなんてどう? ここの音楽は何色? 白みがかった薄緑? 暗闇で見た雪の色? 羽化したばかりの昆虫の羽根の色?
ビョークにシガー・ロス、ムーム。大自然と雪に覆われた、妖精の棲んでいる国──というのはよく見かける説明。人口比率から言って、これらの極めて個性豊かなアーティストを送り出した背景には、何があるのだろう。あるアイスランドのミュージシャンによるこんな言葉を見つけた。「若いバンドであろうが、自分たちの国ではアルバムはせいぜい200枚売れるのがいいとこだと思ってる(中略)。それでもなぜアイスランドの音楽がスペシャルなのかと人は尋ねる。だってそれは自分たちが楽しいようにやるからさ!」。
赤ん坊が自分勝手に泣き叫んで主張をするように、きっとアーティストにとっても初めの一音は〈誰かのために〉と考えられて鳴らされたりはしないのだろう。のっぴきならない欲求から発せられる音や叫び。それは吹雪のなかでちょっとやそっとでは隣人に届かない叫び、あるいはつぶやきだったり、海を隔てた向こうにある文明国への注意引きだったりするのかもしれない。ついつい力がこもったり、そもそもみんなと同じ色じゃ気付いてもらえないのかもしれない、とか──だからそれはいつの間にかパレットのなかで他の誰にも出せない、とっておきの色になったりするのだ。
ラムチョップのゆるゆるレシピなどはこちら
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RECIPE ラムチョップといっしょに堪能したい、今月のDelicious Dishes!!!
BJORK
『Vespertine』 Polydor(2001)
言わずとしれた世界的な大スター。傑作/問題作ばかりのなかでも、この一枚はシンガー・ソングライターとして特に優れたアルバムでは? 時に壮大な演奏と私的な歌詞とのコントラストが眩しく、乙女風速最大!!

GUSGUS
『Forever』 Great Stuff(2005)
北欧は電子音楽に強いという印象。それは彼らが冷たいもののなかにある温かいものに対して、人一倍敏感だからのかなと思う。PS、このアルバムの歌モノにうっすらと漂うハウス、R&Bの手触りは何だか新鮮。
「Screaming Masterpiece」 Milan(2007)
人口およそ33万人足らずというアイスランド。このドキュメンタリーDVDは同地の音楽シーンを知るのにオススメ。有名無名問わず、それぞれの音で存在を主張するアーティストたちの言葉、表情、演奏の数々が収められています。おもしろい!
PROFILE
グディングス・リナ
格好良いゴッタ煮ビート音楽を作り出すシンガー・ソングライター/トラックメイカー。カヴァー・アルバム『The Nightbird』(ビクター)も大好評! 最新情報は〈http://www.goodingsrina.com/〉にて随時更新中!