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第535回 ─ FreeTEMPO

連載
NEW OPUSコラム
公開
2009/09/16   18:00
ソース
『bounce』 314号(2009/9/25)
テキスト
文/aokinoko

国産ハウス隆盛の先駆けとなった彼のカヴァー集が登場! グッド・メロディーの名曲群が、すっかり素敵に大変身

  どこか日本的な郷愁を感じさせる美しいメロディーと、ハウスやジャズ、ブラジル音楽などのエッセンスを内包したスタイリッシュなサウンドによって、いまや多方面で絶大な人気を誇るFreeTEMPOこと半沢武志。前作『SOUNDS』がオリコン・チャートで上位を記録したのをはじめ、SAWAのプロデュースや映画「シャカリキ!」のサントラを手掛けるなど、着実にその名を広めている。ハウスやクロスオーヴァー系のサウンドがクラブ・シーンを越えてJ-Popリスナーにも浸透するようになったのには、彼の功績も大きいだろう。そんなFreeTEMPOが今回企画したのは、半沢自身がリスペクトする国内外のアーティストを指名し、自身の楽曲をカヴァーしてもらうという『“COVERS”FreeTEMPO COVERED ALBUM』。参加アーティストの顔ぶれを眺めてみると、いわば同胞ともいえるダンス・ミュージック系の面々が1組もいないことに少々驚くが、FreeTEMPOの良い意味で雑食性を兼ね備えた幅広い音楽観を思えば納得できるはずだ。

 さて、その気になる中身はというと、祈りにも似た真摯な歌声を響かせたバラードで魅せる土岐麻子“Universe Song”、エネルギッシュにアコギを掻き鳴らし、クールな原曲のイメージを覆す熱いヴォーカルを披露した曽我部恵一“Sky High”といった、〈歌〉に焦点を当てて豊かなメロディーを引き立てるような構成の楽曲群にまず耳を奪われる。その一方で、グザヴィエ・ボワイエの柔らかな歌声とタヒチ節とも言える独特のビートが穏やかに絡み合うタヒチ80“HARMONY”や、blanc.名義でFreeTEMPO作品に参加するなど、かねてから親交の深いメイナード・プラント率いるMONKEY MAJIK“Trees”といったバンド勢による賑やかな再生も楽しい。なかでも特に異彩を放っているのが、軽やかなオリエンタル・サンバを静謐かつ鋭い独自のオーラを漂わせる日本語詞のミニマム・ソングに一変させた空気公団の“Birds”。この仕上がりには驚く人も多いのではないだろうか?

 「いままでの音楽活動のなかで、とても特別な思いを感じた」と半沢が語るように、聴き手にとっても多くのサプライズと発見を見い出すことのできる素敵なアルバム『“COVERS”FreeTEMPO COVERED ALBUM』。この経験を踏まえて制作されるだろうFreeTEMPO自身の次作も、俄然楽しみになってきた!

▼FreeTEMPOの近作を紹介。

▼『COVERS FreeTEMPO COVERD ALBUM』に参加したアーティストの作品を紹介。