危険すぎるラッパー、パリスの闘争は続く……
いまだに〈ヒップホップ=貧困や差別に苦しむ黒人の叫びを表現した音楽じゃなきゃダメ〉とかいう固定観念が脳から剥がれない人も多いようですが、そんな方も当然パリスの自主レーベル=ゲリラ・ファンクの作品ならOKでしょう。パリスとは過激すぎるリリックや言動で90年代に物議を醸した西海岸のガチンコな左巻きラッパー。世紀を跨ぐ頃には大人しくなっていた彼が改めて話題を呼んだのは、米軍のイラク侵攻に抗議して〈ホワイトハウスに向けて旅客機が飛ぶ〉というジャケで出した『Sonic Jihad』(2003年)あたりから。以降は自作や90年代から活動する女性デュオのコンシャス・ドーターズの作品をコンスタントに放ち、パブリック・エナミーや元クープのT・キャッシュを自陣に引き入れたり、何やらヤル気全開なのです。しかも、パリス自身がほぼ全編を手掛けるトラックは楽しくファンキーなものが多いのも特徴。このたび同時リリースされたT・キャッシュの2作目とレーベル・コンピ第2弾でも、急進的な主張がキャッチーなサウンドで展開されています。リアル志向の人はぜひ!
▼ゲリラ・ファンクの近作。