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第82回 ─ MoNa a.k.a. Sad Girl

連載
SPOTLIGHT!
公開
2009/08/26   18:00
更新
2009/08/26   18:10
ソース
『bounce』 313号(2009/8/25)
テキスト
文/出嶌 孝次

哀しみを知る魂がストリートから歌う愛……期待の新星が登場!!


  いわゆる〈ウェッサイ系〉は日本でも一般化したとして、チカーノ・ラップ/R&Bのスタイルって何?という人も多いんじゃないか。世界中のローライダーに支持されるチカーノ・ラップは、ブリブリなウェッサイ系Gファンクをベースにしつつ、ドゥワップや60~70年代のスウィート・ソウルを愛した往年のローライダーたちの嗜好(を上手く翻訳しているのがCKBである)に倣って、その甘さやエモさを作中に取り込んだものが多い。つまり、チカーノ・ラップ/ソウルのほうがよりメロディアスで情趣に富んだ内容になっているのだ。

 そして、チカーナ・ラッパーのJVに憧れて活動を開始したのがこのMoNaだ。Sad Girlという愛称を持つ彼女は、京都出身で現在は埼玉に拠点を置くシンガー兼ラッパー。リル・ロブらのオープニング・アクトやカー・ショウ出演で実績を積み、昨年発表した『Hearty Beat』が異例のヒットとなった新星である。今回登場した新作『Sadgirl on the street』は、前作以上にキャッチーで心地良い楽曲を取り揃え、“Angel”のヒットで知られたアマンダ・ペレスや、同じくサッド・ガールを名乗るララ(こちら)にも通じる情感豊かな音楽性が確立された佳作だ。NORAのFuekiss!!とGIPPER、EMI MARIAらを手掛けるAILI、I-DeAなど名の知れたメンツも関与しつつ、核となるMoNa自身の歌声も情熱的な艶を増し、万人が知るべきスウィートな心地良さで溢れていて素晴らしい。23歳で悲劇的な死を迎えたテハーナ(テキサスのチカーナ)の女王=セレナの“Dreaming Of You”を取り上げたのも、まもなくその年齢に並ぶMoNaの気概を示すものだろう。


セレナの95年作『Dreaming Of You』(EMI Latin)