グディングス・リナが世界の〈音楽〉と〈料理〉のお皿2枚使いで贈る、〈音食同源〉コラム!!

この連載も足掛け2年、取り上げた国々は実に20か国以上! そろそろテーマ選びも苦しくなってきた?と思った矢先、ジャマイカを一度もやっていなかったことに気がつきました。音楽的にとっても影響を受けてきたはずの国なのに、灯台下暗すぎ!デシタ。
ところで、これまでいろいろな国の音楽を食いしん坊の探究心で追いかけながら、毎度その国への思いや、時には妄想、それぞれの土地のイメージを切り口に、自分なりに工夫をして紹介してきました。そこには〈先入観を壊そう〉〈未知なる音楽を聴いてみよう〉という主旨があるわけですが、振り返ると自分自身が先入観に頼る書き方をしてしまったな~と感じることもあります。例えばわたしがその土地の匂いを胸いっぱいに吸い込んだことがあったとしても、誰かにそれを伝えるときにはわかりやすい切り口を近道として選んでしまう、ロンドンならパンクとかね。他にも本当にちょっとした印象だけで頭で書いてしまいそうな時、〈こういう伝え方は本質的じゃないよな?〉、あるいは〈本質を隠してしまうんじゃないか?〉などなど自問は尽きません。でも、これは表現という表現につきまとうことだとも思うのです。
音楽でいうと、例えばあるアーティストがレゲエにたっぷり影響を受けて自分が楽器を手に持った時、どんな音を鳴らすのか? 忠実に既成のレゲエを再現するのか、レゲエの精神を寄りどころにダブを作るのか、レゲエの魅力的だと思った部分と他の音楽の魅力的な部分を合体させてまったく新しいものを作るのか、レゲエの魅力をどういう音楽の中で再発見させるのか──。だってそこにミュージシャンの気持ちとか志とか力量、ひいては美学、あるいはセンス・オブ・ユーモアが発揮されているような気がするから。〈好きなもの〉や〈自分が消化してきたもの〉を言葉や音楽のなかで紹介することは一等難しく、そして一等おもしろい。
だとすれば、さまざまなアーティストが常にそういった挑戦を試み、新鮮であり続けているレゲエ・ミュージックは、世界一愛されている民族音楽といえるのかもしれません。
ジャークチキンの手抜きレシピなどはこちら
http://www.goodingsrina.com/
RECIPE ジャークチキンといっしょに堪能したい、今月のDelicious Dishes!!!
MAJOR LAZER 『Guns Don't Kill People...Lazers Do』 Downtown(2009)
ついにリリースされましたね。まさにセンス・オブ・ユーモアとダンスホール愛に貫かれた、ポップなのにストイックな一枚。フューチャー・ラガ界の入口に大きな正門が建ちました。
SEAN PAUL 『Dutty Rock』 VP/Atlantic(2002)
メジャー・レイザーの作品が非ジャマイカからジャマイカへのラヴレターだとしたら、こちらは逆。世界中のパーティー音楽好きをロックする現在形のダンスホール・スター。入門編にも◎。新作も楽しみです!
VYBZ KARTEL 『The Teacher's Back』 VP(2008)
ヴァラエティーに富んだトラックとヒップホップMCばりのライミング。もしも言葉が聴き取れなくても、悪~い感じはだいたい伝わってきます。美メロな歌モノとのコントラストにクラクラ。
PROFILE
グディングス・リナ
格好良いゴッタ煮ビート音楽を作り出すシンガー・ソングライター/トラックメイカー。カヴァー・アルバム『The Nightbird』(ビクター)も大好評! 最新情報は〈http://www.goodingsrina.com/〉にて随時更新中。