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連載/コラム

第107回 ─ つしまみれ @ 恵比寿LIQUIDROOM 2009年7月5日(日)

連載: ライヴ&イベントレポ 

掲載: 2009年07月15日 18:00

更新: 2009年07月15日 18:10

文/土田 真弓

 6月17日にメジャー・デビュー・アルバム『あっ、海だ。』をリリースしたばかりの女子3人組、つしまみれが結成10周年記念イヴェント〈バンドは水物〉を開催した。ロックの権化のようなゲストたちと共に繰り広げられた壮絶な当日の模様を、bounce.comでは詳細にレポートいたします!!

  会場内に入ると、2階のラウンジがつしまみれの歴史を一望できるミュージアムと化していた。歴代の衣装やレトロな小道具、バンドのこれまでの活動を夏休みの自由研究風にポスカで手書きした年表(下書きの跡付き)が壁面に沿って展示されており、その中心ではスーパーボールすくいが大繁盛。そして1階に降りると、寿司チェーンの〈すしまみれ〉やDJで出演したダイノジ出店のうどん屋などが軒を並べており、さながらプチ夏フェスのような風情を醸し出している。

結成10周年企画として、43曲もの持ち曲すべてを演奏するというトライアル・レースのような企画をぶち上げた女子ロック・トリオ、つしまみれ。〈バンドは水物〉と冠されたこのイヴェントでは、ゲストとして迎えた10年以上活動を続けるバンドたち(STANCE PUNKS、the blondie plastic wagon、マイナーリーグ、花団)のパフォーマンスを合間に挟みながら、自身もオープニング・アクトのブラギャル(つしまみれの前身であるブランキー・ジェット・シティのコピー・バンド)として、さらには〈つしまみれ第一部〉〈つしまみれ第二部〉として、この時点ですでに3回に渡って出演しており、ほぼ年代順に構成されたセットリストを展開していた。そして、いよいよ迎えた第三部。時刻はもう21時前だ。

  正直、まりの声は限界に近い状態だったが、そういう細かいことは気にさせないほどのヴァイタリティーが3人の全身には漲っていた(これホント)。で、まず目が釘付けになったのは、ベースを担当するやよいのプレイ・スタイル。ギター&ヴォーカルのまりとドラムスのみずえはある程度動きが縛られるが、コーラス時以外のやよいは自由を謳歌しまくりで、“新しい世界の夜明けはとりあえずROCKとBEERで”の三拍子パートでは、ステージ全体をワルツのステップで移動しながら吉川晃司ばりのハイキックを繰り出すという驚愕のステージングを披露。ワルツ→ハイキック→ワルツ→ハイキック→ワルツ……と、あり得ない身体能力を誇示しながらフロアに向かって無邪気に破顔してみたり、かと思えば、艶かしい微笑みで挑発してみたりと、同じ笑顔でもまったく違う表情を見せる。何というか、〈女子の凄味〉を凝縮したかのような存在感で、つしまみれというバンドそのもののようだ。

「つしまみれ、第三部です。みなさん、あたしたちといっしょに新しい世界の夜明けを迎えませんか!? 全部出し切って帰るからね! みんなも出し切るんだよ!!」

と、まりが叫べば、フロアからも応えるように怒声が上がる。そしてここからのセットリストは、〈第一部〉〈第二部〉を経てようやく到達した最新作『あっ、海だ。』の楽曲へ。賑やかすぎるラインナップのなかから、まずは“山口”を投入。ずっしりとしたギター・リフとファストコア級のノイズとの間を行き来しながら観客を翻弄し、“まつり”ではタイトル通りのハード・ロッキンなお祭りビートでフロアを狂騒ならぬ狂〈躁〉状態へと導いていく。


Photo by mayumin

  「すしまみれのおすしとか、たこ焼きとか、うどんとか、うまかった? ボール取れた? (〈うまかった!〉〈取れた!〉という観客のレスポンスを受けて)……よかった! ちゃんとミュージアム見てくれた? 手書きの年表とか。私あれ、寝ずに書きました!」と、やよいが胸を張る。

「今日は、私たちの全部が詰まってます。最後、ひとことも発せないほどにやるつもりなんですけど、また負けねえぞ、って思ってる! だからみんなもついてきて!」と、まりが煽る。

 そんなMCに続いて突入したのは、3人のハーモニーが全編を覆う“エアコンのリモコン”。急降下するギター・ノイズがうねりまくるラストでは、やよいの上半身が大きくグラインドしはじめ、しまいにはイナバウアー。想像を超えたアクロバティックな動きに、もう感想すら浮かばない……と絶句していると、セットは“ミから出たサビ”へ。イントロのギター・リフだけで大歓声が上がる。〈ミから出たサビがむき出し/あらやだ丸裸恥ずかし〉とうわの空の声色で叫ぶまりの鬼気迫る歌に圧倒されていると、一転して〈エーンヤトット! エーンヤトット!〉という掛け声が……そして、まりの手にはいつのまにか手書きの大漁旗が……。

「今日は大漁だー!! 次の曲は“なmellow”っていう昔作った曲なんだけれども、よくわかんないけど、船を漕ぐことになっているー!! さあ、やよいを見るんだ!!」

……で、指名されたやよいを見ると、ベースを櫂に見立てて船を漕いでいる(もちろん弾きながら)。背後のみずえも無尽蔵の体力でドカドカとパワフルなドラミングを見せつけながら、やっぱり船を漕いでいる。

「というわけで(どんなわけだ)、みなさんに、会いに行きたいと思いまーす!」と宣言したまりは、客席にダイヴ。神輿のように観客に担ぎあげられながら人波の上をやたらすいすいと移動する彼女の姿を見て、「潮の流れが思ったより速いね(笑)」と冷静にコメントするみずえ。

  ……と、3人のペースに完璧に巻き込まれた会場内には、STANCE PUNKSなどでヤンチャに暴れまくっていたパンクスたちが、とりつかれたように〈エーンヤトット! エーンヤトット!〉と叫びながら船を漕ぐ動作を延々と繰り返すという謎の光景が出現。いま思い返すと異様だが、現場にいた時にはごく自然な画のように見えていたから不思議だ。

なめろうについて哀愁たっぷりに歌い上げた後は、切ないラヴソング“いそぎんちゃくひともんちゃく”や、マイクの臭いを嗅ぎまくるという恒例のパフォーマンスと共に“マイクスメルくんくん”へとスライド。最新作メドレーをエキセントリックに披露するなか、その締め括りを担ったのは「バンドは水物。あたしたちの一瞬の輝きを見逃さないでくださいね! ……そして、恋人たちの輝きも一瞬だよね?」というMCに導かれた“険悪ショッピング”だ。調子っぱずれなメロディーとゴリゴリのギター・フレーズによる不協和音からキャッチーなサビへとプログレッシヴに旋回するという、危うい距離感の恋人たちに捧げる(?)お買い物ソングだが、「(彼のことが)好きだよー」と自分に言い聞かせながらも微妙にかみ合わない状況に耐えきれず、「もう我慢の限界だ! もう無理!! もう無理!!! もう無理!!!!」と暴走。ほぼ台詞に近いシアトリカルな歌い回しで観客をシュールな歌世界へと強引に引きずり込む。

 ここで、半狂乱状態の観客と険悪さを醸し出すベースのリフを残し、まりが突如退場……したかと思ったら、ゲストを伴ってふたたび登場。


Photo by mayumin

  「紹介します! 私といつも険悪ショッピングをしてくれる彼です! 泉谷しげる!!」

「オマエ、声が潰れてんじゃねえか!」……と、思っていても誰も言い出せなかった言葉を普通に撒き散らしながら、泉谷しげるが降臨。「わかりゃしねえよ、俺なんかずっと潰れてんだからよ」とすかさずフォローを入れると、代表曲“春夏秋冬”のフレーズを爪弾きはじめる。観客が手拍子で応えると……。

「これは手拍子しなくていいから。そういう曲じゃないから。こっちだけでやるからな。タバコでも吸って来いよ。後で乗せてやるから待ってろ」とツンデレの台詞。だが、歌のおねえさん風に張りのある声で歌うまりとダミ声の泉谷との凸凹ツイン・ヴォーカルでしっかりと会場を盛り上げる。続く“野生のバラッド”ではやよいとみずえも従えたバンド・サウンドで吠えまくり、フロアではOiコールが巻き起こる。

「俺は14時から来てんだよ! 年寄りなんだから気ぃ使ってもっと早く出せよ!!」という泉谷からの悪態には、観客から愛ある〈おじいちゃんコール〉が……。で、泉谷はそんな声援に負けじと力強くサビに突入!……したかに思わせておいて、いきなり「疲れた!」と中断。なかば寸劇調に偏屈ジジイぶりを演出しながら(?)、何だかんだでラストは客席に乱入し、ステージ上に帰還した後はヒムロック顔負けのマイク・スタンド捌きを見せ、しまいにはそのスタンドを観客に投げつけて帰っていった。


Photo by mayumin

  「(スペシャル・ゲストは)大物だったでしょ?」というみずえの得意げな声と共に、ラストスパートを告げるかのごとくスピーディーなスネアの音が鳴り響く。

「残り何曲かわかってますか!? 正真正銘の後半戦です! さっきは泉谷さんに〈オマエ、声潰れてるじゃねえか〉って言われたけど、まだまだ出るぞ! あたしを受け止めてちょうだい!! みんなにすべての愛を捧げますよ! “脳みそショートケーキ”召し上がれ!! これがつしまみれだ!!!」

とシャウトすると同時にまりは背中からフロアへダイヴし、観客に支えられながらマシンガン・ラップを連射。“おじいちゃんのおズボン”では〈おじいちゃんのおズボン〉→〈おじぃ・おズボン〉→〈オジー・オズボーン〉と駆け巡る言葉遊びを観客といっしょに追いかけ、まりの〈おじいちゃんの?〉というコールにほとんど男子と思われる野太い声が〈お・ズ・ボ・ン!!〉とレスポンス。「パンクさぁーんが、いっぱぁーい」という挑発的なMCで幕をこじ開けた“パンクさん”では、ダイヴとモッシュで混乱状態のフロアへステージ袖から駆け出してきたSTANCE PUNKSの面々が飛び込んでいき、またステージ上に戻ってはふたたびフロアへ突入し……と、会場は舞台の上も下も入り乱れた状況に。そこへとどめのごとく、“岩壁の上の一本指総長”“タイムラグ”といった鉄板の2曲が畳み掛けられる。

「あたしたちが、いまを生きてる! あたしたちが、時代を変えるんだ! あたしたちが、時代を作るんですよ! あたしたちが時代の最先端!! みんなもいろんなものを踏み台にして大きくなるように! “バカ元カレー”!!」

という、まさに元彼を踏み台にして完成させた楽曲を経て、最後の最後は最新作のラストを飾ったあの曲へ。

「あなご」「……海産、海産」

「えび」「……海産、海産」

「つしまみれ」「……解散しない、解散しない」

「まぐろ」「……海産、海産」

「花団」「……解散しない、解散しない」

「すしまみれは?」「海産のような、海産でないような」「……海産物、海産物」

  といったやりとりをこの日の全出演者と思いつく限りの魚介類をネタにして繰り返した挙句、雪崩れ込んだのは“海産物”。最後はDJもバンドも含めたこの日の共演者全員をステージに呼び込み、ギュウギュウの板の上でそれぞれが勝手に踊ったり暴れたりというわけのわからない状況に陥りながら、演奏はラストのサンバ・パートへ。狂ったカーニヴァル調で大々的に〈解散しない〉宣言を歌い切ったところで華々しくステージは終了した。

気がつけば、もう23時。〈蛍の光〉に背中を押され、汗を蒸発させながらフロアを出る観客たちは魂が抜かれたように燃え尽きており、そのゾンビのような行列を誘導するスタッフも鼻血止めのティッシュを顔の真ん中から覗かせているという……そのあんまりな光景には思わず笑ってしまったが、その光景こそが、この日の壮絶さをもっとも端的に物語っていたのではないかと思う。無事で良かった……と、しみじみ思いながら帰路についた筆者であった。

つしまみれ10周年記念フェスティヴァル〈バンドは水物〉セットリスト

ブラギャル
1. ガソリンの揺れ方(ブランキー・ジェット・シティ)
2. 赤いタンバリン(ブランキー・ジェット・シティ)

つしまみれ第一部
1. うめうまいタネデカイ(『創造妊娠』収録)
2. 海老原眞治(『創造妊娠』収録)
3. ランジェリーショップ(『創造妊娠』収録)
4. うつ病(『ハンバーガーセット』収録)
5. CAMABOCO(『創造妊娠』収録)
6. 創造妊娠(『創造妊娠』収録)
7. マンホール(『創造妊娠』収録)
8. モヒカン(『流血モヒカン』収録)
9. 猫は本当は優しい生き物じゃない(音源未発表)
10. ケダマ(『創造妊娠』収録)
11. おちゃっすか(『創造妊娠』収録)
12. アメリカのハンバーガー(『つしまみれとロックとビアで』収録)

つしまみれ第二部
1. 世界平和とボウ(『LOVE & PEACCE & “BOU”』収録)
2. 良いテンポです。(『脳みそショートケーキ』収録)
3. キューティービューティーキューピー(『脳みそショートケーキ』収録)
4. おやすみのうた(『Six Mix Girls』収録)
5. チャンダン男子(『つしまみれとロックとビアで』収録)
6. スムージー飲むヒツジ(『つしまみれとロックとビアで』収録)
7. 人生圏外(『BRAIN A-LA-MODE』収録)
8. ママのうた(『脳みそショートケーキ』収録)
9. さくらんボーイ(『つしまみれとロックとビアで』収録)
10. ハイパースイートパワー(『Six Mix Girls』収録)
11. 敵のテーマ(『Six Mix Girls』収録)
12. 献血ソング(『流血モヒカン』収録)

つしまみれ第三部1
1. 新しい世界の夜明けはとりあえずROCKとBEERで(『つしまみれとロックとビアで』収録)
2. ブレスユー(『あっ、海だ。』収録)
3. まつり(『あっ、海だ。』収録)
4. 山口(『あっ、海だ。』収録)
5. エアコンのリモコン(『脳みそショートケーキ』収録)
6. ミから出たサビ(『つしまみれとロックとビアで』収録)
7. なmellow(『LOVE & PEACCE & “BOU”』収録)
8. いそぎんちゃくひともんちゃく(『あっ、海だ。』収録)
9. マイクスメルくんくん(『あっ、海だ。』収録)
10, ストップ&ゴー! (『あっ、海だ。』収録)
11. 険悪ショッピング(『あっ、海だ。』収録)

泉谷しげるタイム
1. 春夏秋冬
2. 野生のバラッド

つしまみれ第三部2
12. 脳みそショートケーキ(『脳みそショートケーキ』収録)
13. おじいちゃんのおズボン(『つしまみれとロックとビアで』収録)
14. パンクさん(『脳みそショートケーキ』収録)
15. 岩壁の上の一本指総長(『あっ、海だ。』収録)
16. タイムラグ(『あっ、海だ。』収録)
17. バカ元カレー(『脳みそショートケーキ』収録)
18. 海産物(『あっ、海だ。』収録)

▼つしまみれの作品

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