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第25回 ─ Bristol

連載
グディングス・リナ の Delicious Dishes
公開
2009/06/17   18:00
更新
2009/06/17   18:03
ソース
『bounce』 310号(2009/5/25)
テキスト
文/グディングス・リナ

グディングス・リナが世界の〈音楽〉と〈料理〉のお皿2枚使いで贈る、〈音食同源〉コラム!!


  〈横好き〉さん万歳の巻──ブリストル滞在3日目。今日は旅先から書いてます。今夜は街の中心にある公会堂的なホールに大好きなバングラのアーティスト、マルキート・シンが来ているというのでライヴを観に行ってきた。観客は9割がインド人コミュニティー。日本でこのライヴを観ることができたとしても、たまらず立ち上がってボリウッド流に踊り出す観客たちのなかで観ることってきっとなかなかないだろうな。彼らに比べたら自分はやっぱり血液や生活に染みついた感じが足らないよなあと感じないこともないけど、その音楽も観客の放つ雰囲気も好きだから、こういうの、ある種の〈横好き〉という感じがするね。

 そうそう、元教会だった建物がクラブになっているという会場に、レゲエのサウンドシステムも聴きに行ったのね。あの重低音とスピーカーの風は感動モノで、脳まで揺さぶるような、時には耳栓さえ必要な、極端な爆音だけれど、ああいうベースの楽しみ方って未体験の人にとっては新しい快感を開拓するようなところがあるんじゃないかな。ここブリストルでは、それこそフロアのなかでいろんな肌色の人が混ざり合って、各々のステップでそのベースの圧力を体感して楽しんでる。連れて行ってくれたDJの友人も、ガキンチョの頃からサウンドシステムに来てたって。だからといって彼はジャマイカン・コミュニティーじゃないし、普通の白人の青年だったわけで、これだってある種の〈横好き〉なわけ。さっきのインドもそうだけど、こんなふうに異文化のコミュニティーがすぐ隣にあって、もし自分が望むなら彼らの文化を心底から〈横好き〉して堂々と楽しんでしまえるムード。これが港町特有の個性なのか、いろんな理由があると思うんだけど。なんてことない田舎町のブリストルに文化の混ざり合う水際があるってことは確かだよ。ドラムンベースやダブ・ステップのシーンを牽引するようなアーティストたちがびっくりするほどここ出身だったりするのも、このサウンドシステムに来てみてすごく合点がいってしまったことのひとつだよ。

現地のミュージシャン、レイチェル・ダッドといっしょに作ったイギリスの家庭料理、ラム&ミントパイのレシピはこちら
http://www.goodingsrina.com/

RECIPE ラム&ミントパイといっしょに堪能したい、今月のDelicious Dishes!!!

IMPROVISATORS DUB MEETS IRATION STEPPAS 『Inna Steppa Dub』 Hammerbass(2009)
今回訪れたのはアイレーション・ステッパスfromリーズによるブリストルでのレギュラー・パーティー。最高にいい音圧でした!

『Steppas' Delight: Dubstep Present To Future』 Soul Jazz(2008)
レコード店とパンチ・ドランク・レーベルを運営するダブ・ステップ啓蒙係、トム率いるペヴァーリストの楽曲を収録したコンピ。人気のピンチとも縁深く、切磋琢磨し合っている模様。

ROB SMITH 『In One Way Or Another』 More Rockers(2006)
わたしが初めてブリストルを訪れて、録音をしてきた思い出の作品! 太い音ながらどこか穏やかで切ないアルバム。ちなみに現在ロブはRSD名義でダブ・ステップ作品を精力的にリリース中。

PROFILE

グディングス・リナ
格好良いゴッタ煮ビート音楽を作り出すシンガー・ソングライター/トラックメイカー。カヴァー・アルバム『The Nightbird』(ビクター)も大好評! UKのクラブ・シーンを満喫してきた彼女のライヴ&DJも要チェック!! 詳しい情報は〈http://www.goodingsrina.com/〉にて随時更新中。