武藤昭平による、〈憧れのアーティストたちと酒場でいっしょに酒を飲んだら?〉――という深夜の妄想話!
25時。俺、武藤昭平と怒髪天の増子直純が楽しく飲んでいるところに、エルヴィス・コステロが登場。「増子はん、ホンマ今日はありがとな。何か無理言うてもうて」「大丈夫大丈夫。とりあえず何飲む?」「ほな、ビールで」。本日の首謀者であるコステロの元にビールが届き、今度は3人で乾杯。そして増子が言う。「じゃあ、もうちょっと人が増えるし、カウンターじゃなくて奥のテーブルに移動しようか」。各自飲み物を持ってテーブル席へと移動。そしてコステロ、「いや~、ポール・マッカトニーはんと遊ぶ約束しとったんやけど、ドタキャン喰らいましてな。で、ウチのカミさんには〈今日は遊んで帰ります、遅くなります〉って言うてたモンやから、真っ直ぐ帰って嫌な顔されるのもな~って。で、増子はんにメールしたんですわ」。コステロってこんなに喋る人なんだ、とあっけにとられていた俺。コステロがまた話し出す。「あ、増子はん、こちらはどなたはん?」「ああ、勝手にしやがれの武藤」「あ、武藤昭平と申します。よろしくお願いします」「よろしく~。エルヴィス・コステロいいます」。隙を見て俺が質問する。「コステロさんの奥さんって、ポーグスでベース弾いてた……」「いやいや、あれは前の妻ですわ。いまはちゃいます」「あっ! すみません。ただ、ポーグスのシェイン・マガウアンさんとこの前いっしょに飲んでて……」。すると眉毛をハの字に歪めながらコステロは言った。「ああ、シェインはホンマにあきまへんわ。ポーグスはジェム・ファイナー君がようがんばってましたから。シェイン、大変やったでしょ? 武藤はん」「ああ、まあ……。最終的にはトイレから出てこなかったですけどね」。
そんな会話をしている最中、また店の扉が開く。するとそこには、とても不気味なオーラを放つ男がいた。男は増子を見つけてニヒルな笑顔を浮かべると、こちらに背を向けてカウンターに腰掛けた。増子は男に声をかける。「ジムさん! みんないるんだからから、こっちに来ればいいじゃん」。その男、ドアーズのジム・モリソンであった。ジムは増子の言葉に振り返り、口元だけの笑顔を返す。そしてまたこちらに背を向けて一人バーボンを注文した。
……武藤昭平、あくまでも妄想の話。
深夜の妄想盤
PAUL McCARTNEY 『Flowers In The Dirt』 Parlophone(1989)
セールス的に落ち込んでいたポールさんが、コステロさんとの共作曲をはじめとする得意のポップ・チューンを満載して第一線に返り咲いた一枚。制作時も互いに言いたい放題だったそうですが、それにしたってドタキャンはヒドイ。親しき仲にも礼儀あり、ですよ!
THE POGUES 『Rum Sodomy & The Lash』 Stiff/MCA(1985)
ひと目見て彼らに心奪われ、この2作目のプロデュースを買って出たコステロさん。ちょうど初めての離婚が成立した直後でもあり、大酒を呷って踊り倒したい気分だったのでしょうか。その勢いに乗ってベースのケイトさんまで押し倒してしまうとは……男らしすぎ!
PROFILE
武藤昭平
ジャズとパンクを融合させたオリジナルなサウンドで人気を博す伊達男音楽集団、勝手にしやがれのドラマー/ヴォーカリスト。昨年末のワンマン・ライヴを収めたDVD「勝手 at 九段 ~2008.12.11. you don't know what "LIFE IS..." at 九段会館大ホール~」(tearbridge)も大好評。また、6月17日(水)に高円寺・HIGH、6月20日(土)に山口・Johnny's BARでソロ・ライヴを行うとのこと。最新ニュースは〈www.katteni-shiyagare.com〉で随時更新中!!