NEWS & COLUMN ニュース/記事

第177回 ─ 40年の時を経ても、カーペンターズは〈遠い想い出〉になんてならない!

連載
360°
公開
2009/05/21   01:00
更新
2009/05/21   17:46
ソース
『bounce』 309号(2009/4/25)
テキスト
文/山西 絵美


  いまから40年前の69年4月22日、LA郊外に住むリチャードとカレンのカーペンター兄妹によって結成されたユニットがハーブ・アルパートに見初められ、晴れてA&Mと契約を結んだ。サイケデリック・ロックが盛り上がりを見せていた時代に、2人は起承転結のあるオーソドックスな3分間ポップスを奏でて瞬く間に人気を獲得。カーペンターズの音、それは〈幸福なアメリカ〉の象徴であり、長引くヴェトナム戦争で疲れきった人々にとっての癒しとなったのである。

「あれから40年だなんて信じられないよ。この年だからね、人生そのものがあっという間に過ぎていくようで。今年の2月4日はカレンが亡くなって26年目だった。すべてがビター・スウィートだよ」(リチャード:以下同)。

 摂食障害による心臓発作でカレンが急死した83年までの14年間、2人はヒット・チャートを全力で駆け抜けた。いずれも古き良きアメリカン・ポップスの輝きを思い出させる、ヴォーカル・メロディーを際立たせたシンプルでエレガントで、そしてややノスタルジックな楽曲揃い。そんなナンバーを詰め込んだ2枚組40曲入りのベスト・アルバム『40/40 The Best Selection』が、4月22日に日本限定でリリースされた。選曲はファン投票によるものだという。

「できればシングル曲以外のナンバーにも投票してほしい。なかにはシングル曲よりも思い入れの強いものがあるからね」と完成前にコメントしていた彼の願いが届いたか、カレンのアルト・ヴォイスに合わせてコードが改変されたシュレルズ“Baby, It's You”のカヴァーなど、隠れた名品もお馴染みの曲と並んで収められている。

「もし彼女が生きていたらとても喜んでいたと思う。彼女にとってファンも音楽も大切なものだったから」。

 残念ながらカレンと共にデビュー40周年を祝うことはできなかった。しかし彼女は決して死んだわけではない。そう、あのエヴァーグリーンな歌声はいまも私たちの心のなかで生き続けているのだから──なんて言葉にすると途端に安っぽくなってしまうが、ベスト盤を聴いて本当にそう思ってしまったのだから仕方がないのだ。