最終話 旅日記

テンをさまよわせ、マルをころがしながら、
あらかじめ特別な訓練をせず、いま持っている技術をフルに使いながら書く。もがきながら懸命に作ったものは、型くずれしていても惹き付けることができる、と信じつつ。
もの作りは身体を動かしながら学ぶもの。わたしは書きながら、先人から山ほど学んだ。わかったのは、名文には作家独自のテンポと間、訛のような固有のことば使いがあるということ。それはまさに、良い(好きな)音楽にも備わっている条件だ。
このコラムに向かっていた三年間は、世界に感じ入る〈こころ〉を凝視する日々だった。
1000文字というのは、一般論や惰性で生まれたトピックの入り込む余地のない不思議な文字数だった。思いつくまま書いていると、すぐに1000文字を超えてしまうし、詩のような説明を省いた文体にすると、まるで字数が足りなくなる。
字数をオーバーしてしまったとき、自分は本当にそう感じているだろうか?と自問しながら無駄なことばを捨てていく作業は楽しいものだった。書いているいまも、1000文字くらいはゴミになるだろう。
ことばが苦手だからこそ、最終回まで真剣にこのコラムと向き合うことができたのかもしれない。
毎回テーマを立てて書いてきたが、さすがに40話分でテーマが尽きたようだ。
あたらしい連載では、詩を書いていくことになる。コラムより直感的で、わたしの日常に沿っていることばの連なり。それを、情報や説明、キャッチ・コピーがほとんどの浮き世に浮かせてみよう。
最後に、コラムの世界に誘ってくれた元bounceの大ちゃんと大石くん、後に担当してくれたシローくん、加藤さん(リニューアル後も宜しくお願いします)、皆さんに多大なる感謝を!! いつか読み返す三年分の旅日記をしまって、新しい朝を迎えます。
PROFILE
青柳拓次
サウンド、ヴィジュアル、テキストを使い、世界中で制作を行うアート・アクティヴィスト。LITTLE CREATURESやDouble Famo-usで活動し、伊藤ゴローとのTAKU & GOROでは『RADIO INDIGO』を発表。4月29日(大阪)、5月3日(東京)に行われる〈Sprinfields〉にLITTLE CREATURESとして出演予定。