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第16回 ─ いまは亡きヒップホップ専門誌の思い出

第16回 ─ いまは亡きヒップホップ専門誌の思い出(3)

連載
サ イ プ レ ス 上 野 の LEGEND オブ 日 本 語 ラップ 伝 説
公開
2009/05/07   16:00
更新
2009/05/07   18:29
テキスト
文/東京ブロンクス


今月のスナップ:春らしいさわやかコーデ!

ブロンクス ジブさんとKEN-BOさん、士郎さんも書いてたよね。

伊藤 〈通訳・K DUB SHINE〉とかもあったと思う。

上野 DJ TATSUTAさんとかDJ CELORYさんも書いてましたよね。

伊藤 DJがライターになるのは必然っていうか、いい流れだと思ったけどね。

ブロンクス 連載と言えば、あと〈ラップじゃんけん〉を忘れちゃいけないでしょ!

上野 アレは笑わせてもらったなぁ。相当好きでした。

伊藤 〈ラップじゃんけん〉は俺も一番思い入れるかもしれないな……一番じゃないけど(笑)。

ブロンクス 俺はあれで紹介されてたCDの半分くらいは持ってるよ。普通にクソばっかだったけど。

伊藤 レコメンの方向、間違ってるよね。買っちゃダメなんだよね(笑)。

ブロンクス 買ってみて「あ、なるほどね」って(笑)。でもヒップホップって、そういうもんでしょ。全部が全部シリアスに捉えてたら……。

伊藤 そうそう。笑える良さもあるよね。そういう、真っ向正面からヒップホップはカッコイイんだっていうのとは違った価値観を提示したのは日本では「FRONT」が初めてかもしれないね。サブカル的な楽しみ方でもあるんだけど、そういうのってアリじゃん。まあ一方でナード的でもあるんだけどさ。もっと大きな価値観で言えばB-BOY的な価値観なんだけど。

ブロンクス そう考えると、士郎さんと沼田さんに尽きるんじゃねーかなっていう気はするけどね。

伊藤 いやデカいよ、その2人は。メチャクチャ。俺なんてレヴューの書き方とか、いまでも相当士郎さんの影響受けてると思うもん。俺はもともと本もあんま読まないし、海外生活も長かったから良い文章を書けるスキルのある人間じゃないんだ。そういう自分が文章の書き方を教わったのは、実は士郎さんのレヴューだったりすんだよね。

ブロンクス あと俺は荏開津(広)さんとか萩谷(雄一)さんの文章も好きだったな。あとさ、最後の方で日本語ラップ特集やったら調子が良くて、その矢先に休刊だったでしょ。あれが、あと半年早かったらなんとかなってたんじゃないかと思ったんだけど。

伊藤 いや~そんなことはないでしょう。日本語ラップが盛り上がってると言ったって、時期によって波はあるわけだし、いつだって日本語ラップを取り上げられるわけじゃないし。

ブロンクス 俺の場合、磯部君や古川さんがやってた〈Homebrewer〉で取り上げられてた面々が身近にいたから、そこを中心にシーンを見てたのね。あと、いわゆる53年組*4の人たちとか。でも実際に表紙や誌面で大きく取り上げられる人は違ったりするじゃん。〈Homebrewer〉とは別に、編集部には編集部で「BLAST」的な時流の読み方というか、「この人を特集していこう」という考えはあったと思うんだけど。
*4 昭和53年生まれのヒップホップ・アーティスト。般若、漢、MACCHO(OZROSAURUS)、TOKONA-X、剣桃太郎、D.O.など多数。

伊藤 俺が入って以降(2002年~)って、日本語ラップの価値観が大きく変わってきた時期だったと思うんだよね。いわゆるアングラな日本語ラップが出てきたときだから。それに対応できたかどうかってことで言うと、もちろん対応できなかった部分もあるとは思う。でも、MSCとか韻踏合組合を大きく取り上げたりしてたでしょ。あれは、初期の「FRONT」の価値観ではできなかったことだよね。

上野 確かに。

伊藤 そういう意味では、ブロンクスの見方に近づいてはいたと思うよ。とは言え、「BLAST」は商業誌だから売らなきゃいけないし、かと言ってアングラなアーティストを取り上げないわけにもいかない。そこで上手く折り合いをつけてバランスを取らなきゃいけなかったという事情はある。

ブロンクス 伊藤君はKREVA君とジブさんとDABO君を押してたイメージがあるよね。別に悪い意味じゃなくて。

伊藤 う~ん、クレさん(KREVA)はちょっと別かなあと思うけど。クレさんはKICK THE CAN CREW全盛の頃も、ソロの最初のときも、「BLAST」ではそんなに扱いは良くなかったんだよね。セカンドの(『愛・自分博』)ときに初めて表紙になった。それは話を聞くなかで、この人は信頼に足るアーティストだなって思うようになったのもあったし。

ブロンクス なるほどね。

上野 KREVAさんは、別冊の「DJ GEARS」でも表紙になってましたよね。

ブロンクス そういう機材特集の別冊とかは出してるのに、なんで日本語ラップのディスクガイド本は出さなかったの?

伊藤 出す前に終わっちゃったの!

一同 (爆笑)。

伊藤 そりゃ考えてないわけないよ。でもさ、日本語ラップのディスクガイドって、どういう方向にするかとか考えなきゃいけないし、実は一番大変なんだよ。

上野 ああ、そうっすよね。

ブロンクス 伊藤君って最初はターンテーブリズム関係中心に書いてたけど、最後には編集部で一番ストリート寄りの趣向になってたじゃん?

伊藤 俺は最初はターンテーブリスト専門ライターだったからね(笑)。だから最初は、日本語ラップの原稿を書くことなんて考えてなかったもん。

上野 最初に「BLAST」の取材を受けたとき、(ロベルト)吉野とターテーブリストの話をずっとしてましたもんね。

伊藤 そうかあ。俺はそのときまで上野たちをよく知らなかったからね。ウェブサイトから辿って「取材したいんですけど」ってメールして。いまとなっては信じがたい「お世話になります~」みたいな丁寧なメールが返って来て(笑)。

ブロンクス そういえば吉野、今年は〈DMC〉*5に出るらしいじゃん。
*5 世界最大級のDJバトル大会。

上野 出ますよ。世界大会まで見てスケジュールを組んでますからね(笑)。ああいうタイプはいまいないから、チャンスはあると言われてる。

伊藤 チャンスは絶対あるよ。吉野は某バトルでJIF ROCK*6を脅かした男だからね。
*6 ターンテーブリスト。2007年の〈DMC〉日本チャンプ。

上野 惜しかった。審査員のアライズに気に入られて。マスクをバーン!とかやってたから、外国人ウケするのかも(笑)。

ブロンクス 90年代前半の〈DMC〉みたいな審査基準だったら優勝候補でしょ(笑)。90年代リヴァイヴァルの波に乗って吉野が世界一になったら時代が変わるよ(笑)。

▼サイプレス上野の関連作品を紹介

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