底抜けの陽気さに隠された女の性をスパイシーなタイ風味でお届け

日本ではあまりよく知られていないタイ・ディスコ。ざっくり説明すると、欧米のヒット曲やアーリー90'sいなたいディスコのサンプルを土着的なリズムと融合させた、ちょっと懐かしい感じのするタイ独自のお水系ダンス・ミュージックだ。その音楽に魅了された日本人女性DJ、真保☆タイディスコが現地の屋台で入手したCDは5000枚、曲数にしてなんと8万曲! それを元に猥雑で煌びやかなムードと曲中に挿み込まれる舌っ足らずでキュートなMC、下世話な大ネタを炸裂させてフロアを幸せヴァイブで覆ってしまうプレイが話題を呼び、BOREDOMSのEYEも共演のラヴコールを送ったという。そんな彼女が、このたびファースト・アルバム『住m場syo着るmの絡まって』を、私生活でもパートナーのDJ shabushabuと設立した新レーベル=KUMARUから発表した。
作詞/作曲、そしてマスタリングに加え、16ページにも及ぶコラージュ満載のアートワークもすべて自身で手掛けた(彼女はKLEPTOMANIACなどが所属する奇才女性アーティスト集団、WAGINASSの一員)パワフルな本作は、テクノやグライム、ヒップホップ、アンビエントをゴッタ煮にしたサウンドと、ラップやヴォーカルを合わせたスタイル。それはDJプレイから一転して、全体に内省的な印象を受けるものだ。また、バウンシーな“なんでもっと…。。☆☆☆”や和風のメロディーが耳に残る“SIANG CHANDRAMA 2008”では愛を綴り、“全部言うとI can't cut my mind in pieaces”では硬質なビートにシリアスな怒りをぶつけるなど、リリックには彼女の剥き出しの感情を吐き出している。
このように、作品では情念すら感じさせる赤裸々な音&言葉をまざまざと見せつけ、DJではハッピー・モードを全開にする――この二面性こそが彼女の正体か。やけのはらとのユニット=まほとけやも結成し、ますます目が離せない!