デビュー作にしてブレイクの予感!な注目の新世代音楽家が登場!

ファースト・アルバム『PHILOSOPHY』から感じたのは、RADWIMPS以降の新世代音楽家がいよいよ第一線に現れたという〈昂揚感〉。すでに映画「僕の彼女はサイボーグ」の挿入歌として“Send”が、TVCMソングに先行シングル“Morning Sun”が起用されている。清竜人(きよしりゅうじん)19歳、満を持しての作品である。
本作はサウンド・プロデューサーにトム・キーン、ベーシストにネイザン・イーストといったフュージョン系のミュージシャンをはじめ、スタッフ/演奏陣にはほぼ外国人が携わっている。そしてその質の高さも驚きだ。曲調はラグタイム風ピアノやホーン入ったファンク、スライド・ギターを乗せたフォーキーなナンバー、ジャズの要素を加えた軽快なピアノ・ポップなどで、清はアコギとピアノを巧みに弾く。音だけならルーツ・ミュージックを消化した温故知新型ポップスと言っても良い。だが、彼の個性の源は声と歌詞にある。ハイトーンでやや頼りなさげな声には聴き手を安心させない〈揺らぎ〉があり、歌詞にはサウンドの心地良さとは裏腹な尖った言葉が使われる。世の中の偽善、格差、思考停止を誘うシステムなどを拒否し、みずからが信じる美しいものと置き換えたいという激情を、一聴してそれとわからぬようにサラリと歌うのだ。この、言葉と歌とサウンドとを独自のドライな美学で合致させる手法が、〈RADWIMPS以降の新世代音楽家〉と書いた理由である。やや単調なこの歌唱がライヴでどれだけ響くのか、時に自己完結に過ぎる言葉がリスナーにどれだけ共感されるか、という疑問もあるが、それ以上に才能と可能性のほうが大きい。今後どれだけ大きな存在になるか、じっくりと見ていきたい。