イノセントな衣を纏ったタフな2人組が、現代人の心を癒す!?

〈癒し〉なんて言ってる余裕ないよ、くたばらないように生きていくだけで精一杯……な昨今。でも癒される必要がなくなったわけではなく、むしろ音楽が持っている〈何だかホッとする〉〈ちょっとだけ気持ちいい〉という効果はさらに強く求められているはず――そんなことを考えていたとき、彼らの奏でる歌は僕のなかで、〈いま、この音楽が必要だ〉という強い確信と共に鳴り響いた。
園部信教(ヴォーカル/ギター)、山崎“paul”貴博(ドラムス/キーボード)から成る高知出身のモロコ。昨年リリースしたファースト・ミニ・アルバム『日曜の朝、黒に染まる夜』を曽我部恵一やアナログフィッシュの佐々木健太郎らが絶賛し、着実に知名度を上げてきた彼らが、初のフル・アルバム『だからゆくのさ』を完成させた。60~70年代のフォークやブルース・ロックを想起させる有機的なサウンド(ところどころに90年代ギター・ポップの影響もチラリ)、独特の酩酊感を漂わせる園部の歌を軸にした楽曲は、ピュア、イノセント、ナチュラル……というイメージをおそらくは意図的に纏いながら、軽やかなポップネスを響かせる。また、どこにも行くあてがない、といった印象のある2009年の現状をしっかりと見つめながらも、表題曲では〈際限なくセカイは動いているよ 正解も間違いも解らなくなってる〉〈だからゆくのさ〉とさりげなく歌ってみせる精神的なタフネスもこのバンドの魅力だ。どうしようもなく落ち込んだ夜、つい学校や仕事をサボってしまった平日の昼下がりに聴いてみると、何だかわからないけど自分を許されたような、穏やかな気分を実感できると思う。