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第69回 ─ のあのわ

連載
SPOTLIGHT!
公開
2009/03/05   19:00
ソース
『bounce』 307号(2009/2/25)
テキスト
文/森 朋之

リスナーを異世界へ連れ出す魔法の音を持った個性派が登場


  チェロを担当する女性シンガーがいる、という話題性だけではなく、真に豊かなポップ・ミュージックを届けてくれるニューカマーである。このたびデビュー・アルバム『ゆめの在りか』をリリースした5人組バンド、のあのわ。結成当初はいわゆるギター・ロックを志向していたという彼らだが、4年ほど前にヴォーカルを担当するYukkoがチェロを始めたことを契機にその方向性は大きくシフト・チェンジ。シガー・ロスなど音響系と称される音楽からの影響を反映させつつ、独自のサウンドを構築していったという。

 バンド・サウンドにチェロを採り入れている時点で十分に個性的なのだが、『ゆめの在りか』を聴けば彼らのオリジナリティーが単にバンドの編成だけによるものではなく、ジャンルの枠に縛られない自由な発想と極めて高いアレンジ/演奏能力に支えられていることがわかるだろう。クラシック、オペラ、ミュージカル音楽、ギター・ロック、プログレ、そしてアイリッシュを中心としたヨーロッパの民族音楽などの要素をナチュラルに取り込んだ彼らの楽曲は、まるで映画のサウンドトラック(Yukkoはスタジオジブリ作品の大ファンらしい)のような雰囲気も醸し出している。あくまでも歌を軸にしたアンサンブル、美しくも切ないイノセントを感じさせてくれるYukkoの声質も印象的。聴く者の想像力や空想力を柔らかく刺激し、ここではないどこかに誘う――そんな音楽の魔法をたっぷりと感じさせてくれる、ファンタスティックな魅力を持ったバンドだと思う。


1月にタワレコ限定でリリースされた、のあのわのプレ・デビュー盤『noa-nowa demo. e.p+』(スピードスター)