北海道が生んだ伝説の男が、素朴かつエモーショナルな歌で見せる〈僕のすべて〉
UKハードコア・バンドのディスチャージと、スミス“This Charming Man”から名を取ったDischarming man。その実体は、フガジを思わせる苛烈なサウンドで札幌から全国を揺るがし、2004年に解散した、キウイロールの蛯名啓太によるソロ・ユニットだ。現在も札幌を拠点に活動する彼が、待望のファースト・アルバム『dis is the oar of me』をリリースする。〈これが僕のすべて〉とも読める本作には同郷のbloodthirsty butchersから吉村秀樹がプロデューサーとして加勢し、マッシヴなバンド・サウンドを展開。そんな本ユニット最大の武器は、素朴な味のある歌だろう。轟音渦巻くなか、冷静に自分の深部を見つめる様がユニークで、奔流のように感情が溢れ出す長尺のスロウや彫刻のように力強く喜怒哀楽を刻み付けた美しいミディアムは傑作揃いだ。
また、時を同じくしてキウイロールの廃盤となっていた初期音源をまとめた編集盤が2タイトル同時に登場。ナンバーガールやNAHTらと並び称された、尖ってささくれ立つサウンドはいま聴いても何ら古びていない。