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第5回 ─ bounce.com SELECTION 0901

連載
bounce.com SELECTION
公開
2009/01/29   18:00
更新
2009/01/29   19:08
テキスト
文/bounce.com編集部

 今月リリースのナイス盤は、インタヴューやコラムをお届けしたサカナクション、サイプレス上野とロベルト吉野、Discharming Man、MICROPHONE PAGER、MASS OF THE FERMENTING DREGS、Eccy、マイクアキラ from 四街道ネイチャー以外にもありますよ!……というわけで月末恒例、編集部によるこの1か月のオススメ盤〈1月編〉!

エレクトロ・ポップ多めの6枚 (Selected by 澤田)

宮川弾 『ニューロマンサー』 cutting edge

元ラヴ・タンバリンズにして、安藤裕子やスカパラらの作品を手がけてきた作曲家/アレンジャー、宮川弾のソロ・アルバム。〈宮川弾アンサンブル〉名義による2006年の『pied-piper』が生楽器をふんだんに盛り込んだ作品だったのに対して、本作では全編でエレクトロニックなアレンジを導入。ネプチューンズやコーネリアスを思わせる80's風味の電子音を操り、エレガンスの限りを尽くした今様シティー・ポップを作り上げております。特に“サタデーナイト”のセンシティヴなメロディーの応酬にはぶっ飛ばされました。本人のスウィートな歌声もいい感じです。

TOWA TEI 『BIG FUN』 hug Columbia

4年ぶりのフル作。『BIG FUN』というタイトルからは、デトロイト・テクノの雄、インナー・シティーの同名曲が思い起こされたんですが、まさにあの頃の初期クラブ・ミュージック――それこそ、テイ氏が所属していたディー・ライトの諸作などにあった自由な空気感を取り戻してみせた大傑作。80'sディスコ・クラシック風の“Taste of You(君の味)”や、クラフトワークをアーバンに解釈したような“A.O.R.(アダルト・オリエンテッド・ロック)”などなど、アルバムのどこを取ってもポップな瞬間だらけ。クリック・ハウス以降のファンクネスと、エレクトロ・ファンクのそれとを折衷したかのようなサウンド・デザインも見事すぎます。

そのほかのナイス盤をずらりとご紹介!!

 現在はyoga'n'antsとして活動する江森丈晃が90年代に率いていたバンド、Citrusのベスト盤『Pits Are The Pits (25 GOLD=RARE=DEBRIS 1992-2000) 』が衝撃的。なんと、バンドが影響を受けた〈他人の曲〉を収録! それがCitrusの曲にしか聴こえないことにまたびっくり。もう一枚の驚き盤が、東京スカパラダイスオーケストラの沖祐市による初ソロ『ひつじさんとわたし』。バンドでの熱いプレイからは想像がつかない、クラシカルな楽曲が揃ったソロ・ピアノ集となってます。稀代のダンス・ミュージック・バンド、SLY MONGOOSEもまた、『MYSTIC DADDY』で挑戦的なサウンドを提示。これまでカリブ海周辺のグルーヴを探求していた彼らですが、この新作ではプログレをダンス文脈で解釈したようなアンサンブルを展開。石野卓球をヴォーカリストとして起用するアイデアも最高でした。ラストに挙げたいのが、レッチリのギタリストとして知られるジョン・フルシアンテ、5年ぶりのソロ作『Empyrean』。壊れまくったアシッド・フォークを聴かせてくれた初期のソロ作が個人的フェイヴァリットなんですが、緻密な一大サイケ・アルバムに仕上げられた新作もまた素晴らしい! ティム・バックリー“Song To The Siren”のカヴァーに日々、和まされてます。

またもやダンス寄りな6枚 (Selected by 土田)

THE QEMISTS 『Join The Q』 Ninja Tune/BEAT

うわわわわ、作品全体から噴出している熱量がハンパない! ニンジャ・チューンの注目ニューカマーによる初作は、ヒップホップやレゲエも呑み込んで傍若無人に暴れ回るロッキン・ドラムンベース・アルバム。ニューレイヴやエレクトロ勢とも共振する問答無用の肉体性と、ヘヴィー・ロックやハードコアばりに歪んだシンセ、重量級の音圧、凄まじいスピード感――とことんマッシヴ&エネルギッシュに攻めてくる本作を前にしたら、もう抗う術などありゃしません。元フェイス・ノー・モアのマイク・パットンを迎えた“Lost Weekend”をはじめ、ペンデュラムやレイジ、プロディジー好きなら卒倒モノの楽曲だらけという恐ろしい一枚です。

ANIMAL COLLECTIVE 『Merriweather Post Pavilion』 Domino

生音、エレクトロニクス共に光の乱反射のようなキラッキラのサウンド・デザインが施された新作は、ドリーミーという言葉では済ますことのできない〈常軌を逸した祝祭感〉に襲われる逸品。魔法の呪文のように繰り返される美しいハーモニー、瑞々しい生命力を漲らせたトライバルなリズム――ひどく楽しげに踊る音たちに導かれて辿り着くのは、色鮮やかな草花が咲き乱れる楽園? それとも、星々がひっきりなしに流れ行く宇宙の最果て? それとも……と、意識が恍惚の境地に囚われたまま永遠に彷徨ってしまいそうな、究極の桃源郷サウンドを体験できます。後期ビーチ・ボーイズやハイ・ラマズあたりが好きな方にもドンピシャかと。

そのほかのナイス盤をずらりとご紹介!!

年末年始は箱根駅伝を観た記憶しかありません。大丈夫でしょうか。そんな自分に染み渡ったのは、Libyusの若き匠、Michitaの新作『THREE』。透明度の高いチルなトラックと叙情と詩情が滲みまくりのラップが絡み合う、エレガントなヒップホップ・アルバムです。また、ワープの鬼才=スクエアプッシャーからは、前作から約3か月という短いスパンで最新EP“Number Lucent”が到着。先のアルバム同様に、本作も彼の作品のなかではかなりポップな仕上がり。ハード・フロアかつドライヴィンに突き進むアグレッシヴなドラムンベースの応酬に、筆者の心拍数は上がりっぱなしです! 続いては、ハウス、テクノ、ブレイクビーツ、ヒップホップ、エレクトロニカなどをコラージュし、壮大なダンス・ミュージック絵巻を展開するAnchorsongの新作“The Bodylanguage EP”を。ドラマティックなサウンドを堪能出来るCD以上に、ライヴ映像が収録されたDVDが凄い。MPCとシンセサイザーのあいだを行き来しながらリアルタイムでフレーズを打ち込み、サンプリングすることで楽曲を構築していくさまは圧巻! ぜひ生で観たいです。また、Spangle Call Lilli Lineのギタリスト、笹原清明と藤枝憲による新プロジェクト=点と線の初作『ten to sen』も、やはり生演奏で味わってみたいオーガニックなエレクトロニカ。空間のなかにひとつひとつ丁寧に落とし込まれる音の粒が連なり、美しい流線型を描いてゆく――そんな幸福なイマジネーションが広がる上品な一枚です。