今月リリースのナイス盤は、インタヴューやコラムをお届けした80kidz、サカナクション、THE LOWBROWS、LOTUS GUITAR、DEXPISTOLS & ROC TRAX CREW以外にもたんまりとあるんです!……というわけで、編集部によるこの1か月のオススメ盤〈12月編〉! 年末なので、オマケもありますよ!!
またしても国産ものばかりになってしまった6枚 (Selected by 澤田)
山口リサ 『Crystal Lights』 BabeStar
静岡は浜松を拠点に活動するシンガー・ソングライターのサード・アルバム。トレンドに流されることなく、R&Bのメロウネスを一貫して追求してきた彼女ですが、本作は、そんな活動の集大成と言えそうな仕上がり。アーバンなR&Bサウンドのあらゆるヴァリエーションを詰め込み、きらびやかなメロディーを乗せて展開してみせた、極上のスムース盤となりました。嫌味なく歌謡テイストを練り込んでいるのがまた素晴らしく、聴き心地は実にポップ。安室ちゃんにも古内東子にも通じる魅力を備えているので、両者のファンは是非一度お聴きあれ。
EVISBEATS 『AMIDA』 AMIDA STUDIO
元・韻踏合組合のトラックメイカー、EVISBEATS。様々なアーティストへのビート提供で、そのオリジナル過ぎる才覚を発揮し続けてきた彼が、初のオリジナル作を届けてくれました。いかがわしくエキゾな音盤をザクザクと堀り、そこからフレッシュなトラックを作り上げていく嗅覚&センスには脱帽の一言。ネタ使いはフリーフォームながらも、ヒップホップの図太いグルーヴを注入することは忘れない姿勢も素晴らしい。また、本作では自身のMCも全面展開。真摯なメッセージをファニーな語り口で投げかけております。
そのほかのナイス盤をずらりとご紹介!!
SEEDA&DJ ISSOの人気ミックスCD〈CONCRETE GREEN〉への参加などで名を知らしめてきたGEEKが、2作目となる『LIFE SIZE II』を発表。日常をドラマスティックに綴るスタイルはそのままに、より間口の広いサウンドを獲得した充実作です。フィジェット・ハウスのフィクサー、シンデンによるミックスCD『Fabriclive 43』は、本サイトの〈ジャパニーズ・エレクトロ特集〉制作中、ライター・佐藤譲さんに紹介してもらった一枚。フィジェット周辺のダンス・ミュージック最前線を捉えた格好のドキュメント盤と言えるでしょう。曽我部恵一主宰のROSE RECORDSによるコンピレーション『perfect! -Tokyo Independent Music-』も、そのドキュメント性において意義深い作品。環ROYのヒップホップ、七尾旅人の弾き語り、DJ YOGURTのバレアリックなトラックなどなど、多彩なサウンドが並ぶ様子は、東京インディー・シーンの現在を見事に切り取っているのでは。最後に紹介したいのが、山本精一率いる想い出波止場による91年作『水中JOE』のリイシュー。緻密で執拗な音響構築っぷりは〈ポスト・ロックの先駆〉とも言えそうですが、それだけでは語り得ない謎だらけの一枚。それでいて、ものすごくポップなのがまた不思議な怪盤です。
オマケ! 2008年の20枚
悩み出すとキリがないので、思いつくままにササッと挙げてみた20枚。サイケ・ロック~アシッド・フォークを現代的にアップデートしてみせたポーティスヘッドが私的ベスト。アシッド1本勝負をかけ、世間のレイヴ回帰にもシンクロした電気グルーヴ『YELLOW』も偏愛せずにはおれない傑作でした。マジカル&洒脱なインストを聴かせてくれたグッドラックヘイワ、ブリティッシュ・フォーク趣味全開の湯川潮音、よりスタンダードなポップにトライしたDE DE MOUSEといった面々の〈己の道を突き進む〉勇気に拍手を。最も新しさを感じたのが、未来派レゲエのコンピ『PART2STYLE presents STRICTLY DANCING MOOD Vol.1 -FUTURE RAGGA SESSIONS-』。自由な空気とワクワク感が詰まっていて、音楽を聴く楽しさを再認識させてくれた一枚でした。
浮遊したり漂ったりしたい気持ちの6枚 (Selected by 土田)
aie 『box』 Pヴァイン
2006年のシングル“I Was In The Small Circle”、今年2月のミニ・アルバム『sequel』と合わせた三部作の終章を飾るファースト・フル・アルバム。個人的には、この作品が2008年のベスト・エモ盤です。柏出身ということもあってヌンチャクなどが引き合いに出されがちな彼らですが、パンクもハードコアもヘヴィー・ロックも柔軟に採り込む独自のハイブリッド感覚こそが特筆すべき点かと。ド迫力のトリプル・ドラムをはじめとした多彩なリズム・アプローチや、効果的に挿入されるシンセなども強力な武器。圧倒的なスケールで放出される躍動感に満ちたサウンドは、もはやエモにしてエモにあらず。とりあえず、ロックが好きという方には誰にでもオススメしたい一枚です。
Harp On Mouth Sextet 『Sound Garden』 Imagined
関西発の電子音楽家=RUBYORLAをはじめ、パーカッションや改造ハーモニカ隊などで構成される大所帯バンドの新作は、ALTZやRIOW ARAIによるリミックスも含むDisc-1と、スタジオ・ライヴが収められたDisc-2の2枚組。雅楽とダンス・ミュージックが融合したサウンドでヨYEや山本精一をも虜にする彼らですが、ディープ・ハウスやブレイクビーツを下敷きにしたビートや意志を持って漂うハーモニカの旋律、躍動的に揺らぐシンセ音の深遠なる饗宴はまさに圧巻。意識が神秘の宇宙へと瞬間移動します。そんなDisc-1に対して、Disc-2は生き物のように跳ねるパーカッションがトランシーな昂揚感をもたらすエキサイティング仕様。どちらからも感じられる〈攻め感〉が個人的なツボです。
そのほかのナイス盤をずらりとご紹介!!
まずは、メロディアスなピュア・テクノを披露したファースト・アルバム『Sea Train』でいきなり大ブレイクを果たしたmetalmouseの新作『boscage』。国内外におけるライヴ活動をとおして得た経験をハード・フロアなビート感と流麗なメロディーへと見事に還元した、ロマンティック・テクノ盤です。続いては、テクノ+ダブなサウンドとポエトリー・リーディングがスピリチュアルに絡み合うビート・ファーマシーのニュー・アルバム『Wikkid Times』を。ミニマルかつアンビエントな音世界のなかを漂うのは、社会派な言葉の数々。その姿勢には、そこはかとないパンク魂も潜んでいる気が。また、日本のエレクトロニカ・シーンの重要人物=ausからも新作『After All』が到着。叙情的な電子音で多くのリスナーを魅了する彼ですが、本作では特にメランコリックな趣きが前面に出ているのでは? 2曲収録されているヴォーカルものも、繊細なメロディーを引き立たせるミニマルなプロダクションが素晴らしいです。最後は今月のロック盤として、ようやく日本盤がリリースされたヴァン・シーのファースト・アルバム『V』を。キラキラしたエレクトロが大展開されてますが、その隙間から滲み出るアンニュイさが気になります。ニューウェイヴの多面的な解釈の仕方が新鮮に感じられた一枚です。
オマケ! 2008年の20枚
澤田氏のコメント同様、2008年のベストとなると決められなくなるので、自宅でのリピート率が高かった20枚という基準でセレクションしています。ここに挙げた盤は、〈この20枚しか所有してないのか!?〉と自分でツッコみたくなるほどに、やたらと聴いてました(&現在進行形で聴いています)。こうやって見ると、ブレイクビーツものを好んで聴いていたんだなあ、と意外な発見をしてみたり。ロックにしても、ユニークなリズム/ビートを擁しているバンドが今年の気分だった様子です(他人事っぽいですが)。根拠はないけれど、年末から2009年にかけてはオルタナティヴ・エモが極私的に流行しそうな予感がしています。