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第67回 ─ Lamp

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SPOTLIGHT!
公開
2008/12/18   00:00
更新
2008/12/18   18:44
ソース
『bounce』 305号(2008/11/25)
テキスト
文/森 朋之


  80年代初頭の山下達郎や荒井由実あたりから始まるシティー・ポップ、70~80年代のソウル・ミュージック、さらにAORやボサノヴァなどの影響をしっかりと咀嚼しつつ、耳馴染みはあるのに似たものがどこにもない、確かなオリジナリティーを体現するバンドである。染谷太陽(ギター)、榊原香保里(ヴォーカル)、永井祐介(ヴォーカル)から成るLamp。2003年の『そよ風アパートメント201』で登場し、これまでに3枚のオリジナル・アルバムをリリースしている彼らから、約3年半ぶりとなる新作『ランプ幻想』が届けられた。

 前作『木洩陽通りにて』では、緻密なアレンジとオーヴァーダブによって厚みを出したサウンドを軸にしていた彼らだが、本作では生楽器を主体としたシンプルな音作りへシフト。その結果、奥行きのある歌詞とメロディーの魅力をよりストレートに伝えることに成功している。アコギとピアノ、そしてストリングス・クァルテットの音色がゆったりと溶け合うオーガニックな雰囲気のバラード“密やかに”、3人のコーラス・ワークが夏の終わりの叙情を描き出す“ア・サマア・バケイション”などがその好例と言えるだろう。また、ミルトン・ナシメントやガル・コスタに象徴されるMPBサウンドに日本的な情緒を忍ばせたような“儚き春の一幕”、たおやかなフォーク・ソングからサイケデリックなオリエンタル・サウンドへと転換する“ゆめうつつ”など、アレンジのセンスも一段と磨かれている。日本人が作るポップスの可能性をさらに広げるような才気が迸った、儚くも美しい傑作の登場だ。

▼Lampの作品を紹介