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第3回 ─ bounce.com SELECTION 0811

連載
bounce.com SELECTION
公開
2008/11/27   18:00
テキスト
文/bounce.com編集部

 今月リリースのナイス盤は、インタヴューやコラムをお届けしたNEWDEAL、鈴木亜美、世武裕子、NEON、南波志帆、SBK以外にもた~っぷりとあるんです!……というわけで、月末恒例連載! 編集部によるこの1か月のオススメ盤〈11月編〉!!

冬へと走り出したくなる6枚 (Selected by 澤田)

VARIOUS ARTISTS 『STRICTLY DANCING MOOD vol.1 -FUTURE RAGGA SESSIONS』 PART2STYLE

〈FUTURE RAGGA〉というお題の元に、RUB-A-DUB MARKET、鎮座DOPENESS、1★狂、SPACE MCEE'Zなど総勢14組のアンダーグラウンドな面々が集結。それぞれがオリジナル解釈によるエレクトロニック・レゲエ~ジャングル~ダブを展開する未来派コンピレーションです。ミドルスクール期のヒップホップや初期のダンスホール・レゲエに通じるような、ラフでいなたい打ち込み感と、そこから生まれる自由な空気が全編に吹き込まれており、聴いていてとにかく楽しい。ここから、シーンの新たな潮流が生まれそうな予感も感じさせる一枚です。

THE YOUNG GROUP 『14』 RONDADE

ギター2本のアンサンブルで、フォーキーな叙情を紡いできたデュオの新作は、〈14歳〉をテーマにした一枚。思春期の入り口に立った、あの世代だけが持ち得る衝動やメランコリーを、繊細に爪弾かれるギターやヴォーカルが描出。それはニック・ドレイクに代表されるナイーヴなシンガー・ソングライターの作品のようであり、ベン・ワットに代表されるダークなネオアコの系譜に連なる作品のようでもあり。ビートルズ“Yesterday”という超スタンダード・ナンバーのカヴァーも、ごくごく自然に溶け込んでおります。

そのほかのナイス盤をずらりとご紹介!!

 にせんねんもんだいのレーベルから発表してきたCD-R作品群が話題のシンガー・ソングライター、麓健一が、ファースト・アルバム『美化』を発表。弾き語りに様々な宅録手法を投入して編み上げられた音世界は異様なまでに美しく、かつ耽美なだけではない力強さを備えております。続いては、Lampが3年半ぶりに放つフル・アルバム『ランプ幻想』。ブラジル音楽のエッセンスや、70年代のシンガー・ソングライター作品の質感を取り入れながら、丹念に磨き上げられた日本語ポップスの数々。パッと聴いた限りでは地味かもしれませんが、深い奥行きを備えたウェルメイドな逸品です。Lampと合わせて聴きたいのが、空気公団による結成11年目の新作『メロディ』。日常の風景からリリカルな瞬間を汲み上げ、音楽に変換していく彼らの手腕は、もはや職人芸の域に達しているのでは。これまで以上にシンプル、かつ圧倒的な完成度を誇る作品世界に、思わずため息。……と、ここまで邦楽オンリーで来ましたが、最後に英国の5人組、ピート・アンド・ザ・パイレーツのデビュー作『Little Death』をご紹介。ジョナサン・リッチマン好きにはたまらないヘロヘロなロックンロールっぷりに一発でノック・アウトされちゃいました。クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤーやヨ・ラ・テンゴに通じるポップ・センスも魅力的な一枚です。

毎月微妙に偏るのは何故?……な6枚 (Selected by 土田)

Kenmochi Hidefumi 『Falliccia』 HYDEOUT

Chari Chari『in time』を初めて耳にした時と同じくらいに驚喜した、HYDEOUTの新鋭による新作です。ガット・ギター、ピアノ、パーカッションというのが筆者個人にとっては三種の神器なもので、流麗なギターとトライバルなリズムがスピーディーに絡み合う冒頭のタイトル曲で、あっという間に意識はここではないどこかへ……。生楽器の響きを効果的に躍動させるプログラミングも秀逸で、深遠かつ壮大な音像のなかからは、端々しい生命力と静かなるエモーションが浮かび上がってきます。そんな〈エモ感のあるインストゥルメンタル〉というトピックで言うなら、toeに通じるものもあるかもしれません。

FEEDLE 『All Your Days Are Weird』 Ecke

ボーズ・オブ・カナダ好きにオススメ!……なんてコメントカードに色めき立って購入した本作は、どうやら元65デイズオブスタティックのメンバーらしいグラハム・クラークによる(おそらくソロ・)プロジェクトのセカンド・アルバム。ユルくてアヴァンなポスト・ロックやブレイクビーツにドリーミーな音響処理を施した前半部分は、シューゲイザー的なノイズすらもどことなくポップな色合い。それが中盤あたりからは清澄なメロディーがアトモスフェリックに溶け出し、スペーシーなアンビエント~エレクトロニカに移行していくという、夢も宇宙も一枚で体験できてしまうファンタジック盤です。いやぁ、良い!!

そのほかのナイス盤をずらりとご紹介!!

 まずはEccy主宰のSLYEから発表された若き実力派MC、haiiro de rossiのファースト・アルバム『True Blues』を。ジャズに造詣の深い彼とヒップホップ~エレクトロニカ畑から集結したクリエイター陣(Eccyはもちろん、ファット・ジョンやOlive Oil、Michita、haruka nakamuraなど……豪華!!)とでコミュニケーションを図りながら制作されたというトラックは、うっとりするほどにエレガント。そこにクール&メロディアスなフロウが舞うという恍惚盤に仕上がっています。またhaiiro関連では、上述の作品にも参加しているMichitaとのコラボレーション・アルバム『Soul Session』も、Libyusからほぼ同時発売。こちらも冬の明け方の空気のように研ぎ澄まされたチルなトラックとリリカルなラップが絡み合う、洗練されたヒップホップ作品です。次に紹介するのもやはりヒップホップもので、Shing02をフィーチャーした“栞”が話題となったトラックメイカー、Suburbanのファースト・フル・アルバム『Suburban』。同曲や映画「となりのトトロ」の“塚森の大樹”をサンプリングした“ほしふるよるに”をはじめ、ピアノを中心としたオーガニックでスピリチュアルな世界観に引き込まれずにはいられない一枚です。……と、こんな流れできて笑えるぐらい唐突ですが、最後はマヒルノのファースト・ミニ・アルバム『辺境のサーカス』をご紹介。変拍子やテンポ・チェンジを繰り返しながら悪夢のように捩れた音世界に転がり落ちてゆくキ○ガイ・ロックが素敵です。“サーカス”などは、同レーベルの先輩=PANIC SMILEファンにもアピールしそうな気がします。