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第442回 ─ Robert Johnson

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NEW OPUSコラム
公開
2008/11/27   03:00
更新
2008/11/27   16:57
ソース
『bounce』 305号(2008/11/25)
テキスト
文/桑原 シロー

彼は本当に悪魔に魂を売ったのか?


  交友覧に〈悪魔〉と記載できるだなんて、羨ましすぎる。その悪魔に魂を売ってパワーを授かり、蝋人形ならぬ〈キング・オブ・デルタ・ブルース〉となった男、ロバート・ジョンソン。〈本当にひとりで弾いてるの?〉と疑いたくなる神業的、いや悪魔業的なギター・テクニックに激エモーショナルな歌──聴くたびに偉大さを実感するばかりなのだが、そんな彼を題材にした評伝「ロバート・ジョンソン クロスロード伝説」が登場した。これは先述したような伝説がいかにして膨らんでいったかを、綿密なリサーチをもとにあきらかにしていく一冊。著者のトム・グレイヴスも正確なロバジョン・ストーリーを語ることに努めている。謎を深く掘り下げながら、稀有な音楽家の多大なる影響力を解読しようとする展開は実にスリリングで、90年リリースの集大成盤『The Complete Recordings』が音楽シーンにどれだけの影響を及ぼしたのかに触れる部分は、特に読み応えあり。〈最後のロバート・ジョンソン伝〉という惹句も納得させられる濃さなのである。

 この書籍の刊行と同時に、ロバジョンの名を世界に広めた件の『The Complete Recordings』が紙ジャケ化。ここにはエリック・クラプトンやレッド・ツェッペリンなどが心を奪われた伝説的なサウンドが詰まっており、まさに〈聴かなきゃ始まらない〉一枚だ。もとはブルース・スプリングスティーンに与えられたフレーズだけど、〈明日なき暴走〉という表現がピッタリな楽曲が揃っている。未経験者は一刻も早く手にして、悪魔と友達になろう。
▼ロバート・ジョンソンの関連作品を紹介。