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第36回 ─ 悲しいへだたり

ESSENTIALS 忘れられない名盤たち その2

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2008/11/20   05:00
更新
2008/11/20   17:45
ソース
『bounce』 304号(2008/10/25)
テキスト
文/出嶌 孝次、林 剛

THE UNDISPUTED TRUTH 『Smiling Faces: The Best Of Undisputed Truth』 Motown 
銀河系コスチュームや奇抜なメイクでステージに立ち、ノーマンのサイケ~コズミック趣味を視覚的にも体現していた男女混成ヴォーカル・グループ。“Smiling Faces Sometimes”や“Papa Was A Rollin' Stone”などテンプスとダブる曲も多いが、このベスト盤ではノーマンがテンプスと縁を切った後のサイケ&スペイシーなディスコ・ファンクも存分に聴ける。後にホイットフィールドへ移籍。
(林)

WILLIE HUTCH 『Try It You'll Like It: The Best Of Willie Hutch』 Expansion 
ノーマンと同じくモータウンの裏方として活躍し、ソロ作も放ったウィリー・ハッチ。これはモータウン時代の音源を中心としたベスト盤だが、ホイットフィールドに移籍して放った2枚のアルバムのうち『In Tune』(78年)からの“Easy Does It”も聴くことができる。制作はハッチ自身だが、リズムボックスがビートを刻むそのスペイシーなダンサーは、背後にいるノーマンの存在を意識させるものだ。
(林)

YVONNE FAIR 『The Bitch Is Black』 Motown(1975)
シャンテルズを経てJBのレヴューに参加し、JBのもとでシングル(と子供まで!)を作ったファンキー歌姫。唯一のアルバムとなるこれは、70年前後の録音曲も含むが、大半はノーマンの制作で、ノーマンが他人に提供してきた曲などをビッチ度全開で歌い倒している。マーヴィン・ゲイが声を挿む“Funky Music Sho Nuff Turn Me On”、ルーファス“Tell Me Something Good”のカヴァーなど注目曲が満載だ。
(林)

CAR WASH 『Soundtrack』 MCA(1976)
ローズ・ロイスによる表題曲が全米No.1となったブラック・ムーヴィーのサントラ。ポインター・シスターズらも参加した本盤の楽曲は、いずれもノーマンの制作で、ダンサブルなファンクから美しいバラードまで、ノーマンならではの作風を満喫できる一枚と言えよう。いまやメアリーJ・ブライジの持ち歌と化している“I'm Going Down”や、“I Wanna Get Next To You”といったバラードの名曲を含む。
(林)

ROSE ROYCE 『In Full Bloom』 Whitfield/Warner Bros.(1977)
エドウィン・スターのバックバンドをノーマンが再編したグループがローズ・ロイスだ。本作は“Car Wash”の大ヒット後に登場したホイットフィールド発の第1弾アルバムで、後にティーナ・マリーやビヨンセらが歌った名バラード“Wishing On A Star”をはじめ、“Ooh Boy”など紅一点のグウェン・ディッキーによる切なくもキュートな歌声が沁みる。Pファンクをノーマン流に解釈したようなダンス曲もあり。
(林)

MASTERPIECE 『The Girl's Alright With Me』 Whitfield/ヴィヴィド(1980)
ノーマンが手掛けたテンプスの73年作『Masterpiece』から命名されたと思しき、ホイットフィールド発の男性4人組。そのテンプスの64年ヒットをエディ・ケンドリックス激似のリードで歌った表題曲、アンディスピューテッド・トゥルースのカヴァー“You+Me=Love”など、過去の作品を歌わせたノーマンは革新より懐旧に浸った感もあるが、この極上のハーモニーには抗えまい。グループ名どおりの傑作。
(林)

THE LAST DRAGON 『Soundtrack』 Motown(1985)
デバージ“Rhythm Of The Night”の大ヒットで記憶される、ベリー・ゴーディが製作した映画のサントラ。若い力に対してウィリー・ハッチらかつての盟友が奮闘するなか、ノーマンもロッキッシュなメイン・テーマ“The Last Dragon”をプロデュース。80年代的な意匠のデジタル・ビートながら、重たいボトムは彼らしくもある。映画の大コケがモータウンに転機を迫ったという意味も含め、世代交代を感じさせる一枚か。
(出嶌)