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第434回 ─ REAL BAILE FUNK

連載
NEW OPUSコラム
公開
2008/11/13   20:00
ソース
『bounce』 304号(2008/10/25)
テキスト
文/青木 正之

ゲットーの真実を映す知られざるバイリ・ファンキ


  バイリ・ファンキの象徴、Mrカトラに迫ったドキュメンタリーDVD「ミスター・カトラ キング・オブ・バイレファンキ」がリリースされた。バイリ・ファンキといって日本で連想されるのは、ポップスの要素を持ったボンジ・ド・ホレやプロデューサーとして名を馳せるディプロ、またこっそり来日して東海地方を盛り上げてくれたDJマルボロ、あとは現地で凄いことになってるらしい!?……とか、それぐらいかなり曖昧なものだし、享楽的な面ばかりを見てしまいがちだけど、ゲットー生まれの音楽であることを忘れてはならず、Mrカトラは本編でその現実を克明に伝えてくれる。

 ブラジルのスラム街=ファヴェーラでリスペクトを集めるカトラのリリックには、ドラッグ、差別、貧困、暴力など過激なものが渦巻き、それだけを切り取れば決して楽しい音楽とは思えない。しかし、彼のステージには子供も含めて大勢の人が集まり、踊り、叫び、笑う。その一体感は壮観だ。警察はリアルすぎるという理由で警戒し、ステージを禁止しようとする。そんな権力と戦う姿を映す一方で、8人の子供を持つ父親としての顔、転々とガールフレンドの家を訪れる様子、自分のルーツである山間の町での暴力根絶を夢見る姿もキャッチ。そんなカトラのありのままの姿が、スラムで生まれたバイリ・ファンキの本当の魅力を教えてくれるのだ。

▼Mrカトラの参加作品を紹介。