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第433回 ─ World Standard

連載
NEW OPUSコラム
公開
2008/11/13   19:00
ソース
『bounce』 304号(2008/10/25)
テキスト
文/望月 哲

信頼のおけるアーティストと作り上げた理想のポップス!


 ハナレグミ、湯川潮音といったアーティストの作品や、映画「グーグーだって猫である」のサントラを手掛けるなど、プロデューサーとしても精力的な活動を展開する鈴木惣一朗。そんな彼が率いるインストゥルメンタル・ユニット、World Standardが4年ぶりとなるニュー・アルバム『花音(カノン)』を発表した。自宅録音で緻密に作り込まれたこれまでの作品から一転、気心の知れたミュージシャンたちとスタジオに入り、4日という短期間でレコーディングされたという今作。そこに広がっているのは古き良きヨーロッパ映画のサントラを彷彿とさせる、甘美で静謐なサウンドスケープだ。短調の楽曲が多くを占めながら、重苦しい雰囲気には陥らず、作品全体の印象はあくまでもポップ。ハープやヴァイオリンを配した瑞々しいアコースティック・サウンドが、青葉を濡らす朝露のように聴き手の心にさりげない潤いを与えてくれる。83年のデビューから長きに渡り、みずからの理想とする〈ポップスのかたち〉を模索してきた鈴木惣一朗。今作は彼の真摯な思いが静かに花開いた作品と言えるだろう。

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