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第429回 ─ ROBIN THICKE

連載
NEW OPUSコラム
公開
2008/11/13   19:00
ソース
『bounce』 304号(2008/10/25)
テキスト
文/林 剛

ソウルフルな艶が黒光りするスウィートなアーバン・スタイリスト


  ロビン・シックが並の黒人アーティスト以上に黒人音楽業界から求められている白人アーティストだということは、互いの作品に客演し合う間柄のリル・ウェインをはじめ、50セントやアシャンティなど、ここ1年ほどの共演者の顔ぶれを見てもあきらかだろう。で、前作『The Evolution Of Robin Thicke』と同じくスター・トラック発となったニュー・アルバム『Something Else』は、ジェニファー・ハドソンへの提供曲でも好タッグぶりを見せつけた相棒のプロ・Jとさらに音楽的なセンスを磨いて仕上げた、ソウルフルでスウィートな快作だ(リル・ウェインとの“Tie My Hands”も収録)。「70年代ソウルへのオマージュ」という本人の弁を待たずとも、生楽器の繊細でリッチな音色を活かした楽曲群を耳にすれば、気分はすっかり70年代。もちろん、そこには現代ならではのヴァイブスが宿っているのだが、特に今作では、ディスコ調の先行カット“Magic”をはじめ、ストリングス&ホーンを積極的に導入。彼の人気を決定付けた“Lost Without U”での囁くようなヴォーカルもしっかり武器にし、冒頭からリオン・ウェア曲を歌うマーヴィン・ゲイのような妖しい音世界を繰り広げるのだからたまらない。他にもカーティス・メイフィールド風のファンク、ボズ・スキャッグス風のダンサー、ボブ・ディラン風のブルースまで……と書くと節操がないように思えるけど、これが実にスマートにまとまっているのだ。まさにソウル・スタイリストと呼ぶに相応しい男である。