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第2回 ─ bounce.com SELECTION 0810

連載
bounce.com SELECTION
公開
2008/10/30   18:00
更新
2008/10/30   18:35
テキスト
文/bounce.com編集部

 今月リリースのナイス盤は、インタヴューやコラムをお届けしたTHE VOLA & THE ORIENTAL MACHINE、あらかじめ決められた恋人たちへ、オレスカバンド、NATSUMEN、SARAH BRIGHTMAN以外にもわんさかありますよ!……というわけで、月末恒例連載! 編集部によるこの1か月のオススメ盤〈10月編〉!!

テクノ! アーバン! エキゾ!な6枚 (Selected by 澤田)

電気グルーヴ 『YELLOW』 キューン

今年2枚目のオリジナル・アルバムが予告通りに登場。前作『J-POP』が、アブストラクトでどこか不穏な空気を湛えたアルバムだったのに対して、本作は、ほぼ全編をダンス・オリエンテッドなビートが貫く明快な仕上がり。電気の血肉を形成しているであろうアシッド・ハウスに音の照準を絞り込んでおり、シンプル&ファットな電子音がビヨビヨビキビキデケデケ……と奔放に泳ぎ回る全46分。特に、初期の電気をリエディットしたかのようなレイヴ/アシッド賛歌“Acid House All Night Long”の突き抜けっぷりには度肝を抜かれました。

古内東子 『In Love Again』 tearbridge

個人的には、現代最高峰の女性シンガー・ソングライターと断言したい古内東子が、実に3年ぶりのオリジナル・アルバムを引っさげシーンに帰還です。恋愛をテーマにしたストーリー・テリングと、ソウル~AORを咀嚼したソング・ライティングを持ち味に、迷いのない活動を続けてきた彼女。特に本作は、前述の2点を己の本分と見定め、真摯に磨き上げたかのような、洗練を極めた1枚になりました。端的に言って楽曲が粒揃い! オーケストラから打ち込みまでを自在に使い分けたアレンジも、歌謡曲黄金時代のそれを思い起こさせる豊潤な輝きを放っております。

そのほかのナイス盤をずらりとご紹介!!

 まずは、GREAT3のドラマーにして、バレアリックな生バンド、LASVEGASの中心人物だったShirane Kenichiの初ソロ作『manmancer』。テック・ハウス~デトロイト・テクノをベースに、甘美なメロディーを湛えたアーバン・ポップスを作り上げております。東京の地下ダンス・ミュージック界を代表するDJユニット、Traks Boysは2作目となる『Bring The Noise』を発表。前作『Technicolor』ではポップなアプローチを見せていたのに対し、今回は徹頭徹尾フロア仕様。ノイジーなフレーズ1本で展開する“Can't Repair”のシンプルかつ凶悪なサウンドに、思わずのけぞってしまいました。エキゾなインスト集団、SAKEROCKの新作『ホニャララ』は、豪華ゲストを取り揃えた前作『songs of instrumental』とは打って変わり、ほぼゲストなしで臨んだバック・トゥ・ベーシックな1枚に。バンドの核のみだけを堂々と提示して見せた勝負作と言えるのではないでしょうか。そのSAKEROCKの田中馨と伊藤大地がバックを務めたのが、シンガー・ソングライター小田晃生のソロ2作目『発明』。かつての細野晴臣や高田渡を彷彿とさせる、フォーキーでオールドタイミーな歌を紡ぎつつ、時おりハッとするようなアンサンブルやハーモニーを忍ばせてくるのがなんとも絶妙な逸品です。

ダンス・ロック礼賛的な(?)8枚 (Selected by 土田)

KAISER CHIEFS 『Off With Their Heads』 B-Unique/HOSTESS

リリー・アレンやニュー・ヤング・ポニー・クラブが参加したシングル“Never Miss A Beat”でその片鱗を見せていたように、彼らの持ち味であるエッジーなビートにニューウェイヴィーな華やかさが加わり、これまで以上にド派手にエンターテインされた3作目。ゴリッとした骨太なロックンロールをフレッシュにブラッシュアップしつつ、ダンス・ミュージックの享楽性とナチュラルに合体させたプロデューサー、マーク・ロンソンとエリオット・ジェイムズの手腕はお見事。身体のみならず、全編を通じてこれほどまでに胸踊る作品は久しぶりかも。どこから切ってもエキサイティング!な一枚です。

MERCURY REV 『Snowflake Midnight』 V2/HOSTESS

表のうさぎ、裏の猫ジャケにときめかずにはいられない、サイケデリック・マスターの最新アルバム。エレクトロニクスが大々的に採り入れられていることが本作のトピックですが、彼らの深遠かつドリーミーな音世界との相性はもちろんピッタリで、空間的な音の広がり方はもう無限大に……。荘厳なバンド・サウンドと幽玄な歌、天翔ける電子音がスリリングに、ロマンティックに交錯しながら描き上げてゆくドラマティックな交響詩は、大気圏を突き抜けて人類がいまだ足を踏み入れていない宇宙の最果て――神の領域へ。人の手で作り上げられたことが信じがたいほどに神聖な美しさを纏った作品です。

そのほかのナイス盤をずらりとご紹介!!

 絞りきれません……ということで、文字数と闘いながら可能な限りをご紹介! まずはブロック・パーティーの新作『Intimacy』。バキバキ、ビキビキ、ビリビリとしたバ行系(?)の攻撃的なエレクトロニクスとアッパーなビート、ワイルドなバンド・サウンドが合体したダンス・ロックが満載……というか、むしろロッキッシュなクラブ系アクトのような趣も。ムチャクチャかっこいいです。続いては、やはりUKダンス・ロック勢のなかからKBCの新作『The Trick』を。煌びやかでリズミックなギター・サウンドが、たまらない昂揚感を誘ってくれます。また、日本からはDOPING PANDAのニュー・シングル“majestic trancer”を。VERBAL(m-fro)をフィーチャーした表題曲もキラーですが、本作はとにかくカップリングが凄い。ライヴでお馴染みの“MUGENDAI DANCE TIME”をスタジオ録音し、10曲をノンストップで突っ走る! ドーパン入門編として最適な一枚です。そして8ottoからは、これまでアナログ限定で発表されてきたリミックス曲に新録2曲を追加したアルバム『Catch an another fire』が到着。80kidzやモルガン・ガイスト、タクティールをはじめ、いまの地下シーンに直結した豪華リミキサー陣がみずからの個性を遺憾なく発揮! チン・チンの手で宇宙ファンクに生まれ変わった“BLOW”が個人的ツボです。最後はARTLESS NOTEThe morningsのスプリット盤『ARTLESS NOTE × The mornings』を。ツイン・ドラム+ギター編成で人懐こいメロディーもノイズも手玉に取ったアヴァン・ポップを放つ前者と、〈1に衝動、2に衝動。3、4がなくて5に衝動〉的な暴走変拍子ハードコアを炸裂させる後者。今後に大きく期待したいニューカマーです。あ、あとteの新作『まして、心と五感が一致するなら全て最上の「音楽」に変ずる。』は、こちらをご覧ください~。