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第35回 ─ koromogae

連載
踏 切 次 第
公開
2008/10/30   02:00
更新
2008/10/30   18:38
ソース
『bounce』 304号(2008/10/25)
テキスト
文/次松 大助

次松大助が見つめる、とある町の日常──


  知り合い夫婦に子供が産まれたので会いに行ってきました。ギザ皮遊子(ぎざかわゆす)。こんなちっちゃかったけ?って改めて驚いたりして。すごいお利口さんで、すやすや寝てました。子供も確かに癒しですが、子をもった親自体もすごい癒しだなぁって感心しました。今までは何というか〈喧嘩上等〉な雰囲気を、どこかしら常に纏っていた方だったんですが、会ったときには身に纏ってるものが全然違っていて、とても驚きました。

 9月末に突然寒い日が続いたので慌てて冬物を出すことにし、春と秋の年2回しか開かない、殆ど壁だと認識していた押し入れの戸を開き(しかもスライド式ではないので、開くためにパズル・ゲーム「倉庫番」のような肉体的手続きが必要。シット)衣装ケースを取り出し、毛布を取り出し、いざ衣替えをしようと袖をまくったところで滅多に鳴らない、というか世の中に5人くらいしか知らないはずの自宅電話が鳴り、妻が出たところ子供の保育園から。子供が38.5度の熱が出ているのですぐに迎えに来て欲しいとのことでした。


  慌てて衣装ケース群を僕の作業部屋に移し、迎えに行ったのですが、そこから現在まで衣替えに適した日がなく、しかもデモ作りをしている時期だったので機材がフル稼動しており部屋には僕一人が正座をするスペースしかなくなりました。ただ、長時間正座はできないので本に片膝を乗せてあぐらをかき、現在股のあいだでこの原稿を書いています。デモのほうは〈休憩、休憩〉と思って中断し、今まで何となく気に入らなかったフェルトの帽子の形を、針金と熱湯と衣類用の糊でいじったりして、大成功を収めました。楽しい。この帽子のすごいところは、音響学的に計算されたツバのRによって正面の音が聴き取りやすく、手前足下にモニターがある環境で、マイクがハウリにくい、というところです。えぇ、冗談です。

今月のBGM

MICHEL BEROFF
『Claude Debussy:Complete Solo Piano Works』
 
DENON
10年以上誤解していました、ドビュッシー! 17、8歳の頃にこの人みたいに良い演奏で聴いていればフランス人の作曲家を避けることもなかったと思う。大学生の頃に友達に批判したこととか、本当に恥ずかしい。穴があったら埋めて欲しい。深く反省。音楽的に知識豊富な解説もそれだけで素晴らしく、すごくいい買い物しました。5万円拾った、くらいの喜びです(←僕の生活を揺るがすほどの、という意味)。

PROFILE

次松大助
スカ・バンド、The Miceteethのヴォーカリスト。バンドのアルバム『07』、ソロ・プロジェクト=箱の初作『long conte』が好評リリース中。12月3日には兵庫・HASUにて単独ライヴ〈“箱”コウベ vol.2 次松大助ソロ〉を開催予定。詳しくは〈www.miceteeth.net〉にて。