今年でオープン10周年を迎えるタワーレコード新宿店では、現在〈TOWER RECORDS SHINJUKU 10th ANNIVERSARY〉と題してさまざまなイヴェントやキャンペーンを展開中! オモシロ企画が目白押しのこの1か月間を、bounce.comでは独自の視点で追いかけていきます! 今回は、10月11日(土)に開催されたイヴェント〈タワレコ新宿10周年 vs 申し訳ないと11周年〉より、宇多丸さん(RHYMESTER)とミッツィー申し訳さんをご招聘。お二人がレジデントDJを務めるワン&オンリーなJ-POPパーティー〈申し訳ないと〉の話題を中心に、DJやJ-POPにまつわるあれこれについてお話をうかがいました。第3週目は〈申し訳ヒストリー〉編!!
★☆★ 対談第1週〈解釈なくしてDJを名乗るな〉編はこちら!!
★☆★ 対談第2週〈Perfumeをかけるか否か?〉編はこちら!!

――今年で〈申し訳ないと〉は11周年。97年にスタートしたということですよね。
ミッツィー たぶんその辺ですね。正直に言うと、はっきりとは覚えてないんだけど(笑)。
――では最初は結構ゆるゆると始まったんですか?
宇多丸 もともとはUKハウスのイヴェントの一部としてやってたんでしょ?
ミッツィー そうそう。他のDJがUKハウスをかけてるなかで、DUB MASTER XさんのJ-POPを使った10インチをかけ過ぎたら怒られて。
宇多丸 それじゃ〈J-UK〉だっていう。〈Jユーロ〉的な(笑)。
ミッツィー で、「じゃあわかったよ!」ってもう一つ別のイヴェントを作って。それが〈申し訳〉になった。
宇多丸 初期のメンバーも、みんなDJは上手かったですよね。
ミッツィー 最初から、ヒップホップとかハウスがプレイできるメンバーが集まってやってたんだよね。でも〈DJ角松〉って、角松敏生だけをかける人がいたり、アニソンしかかけないやつがいたり。そいつはテクノをかけさせたらすごい上手いんだけど「アニメは低音を絞って静かめに聴くのがいい」とか言って小さい音でかけちゃって。
宇多丸 全然フロア・ライクじゃない(笑)。
ミッツィー 「“一休さん”はこれぐらいで聴いた方がいいんだよ!」みたいな(笑)。よくある歌謡曲イヴェントに近かった。そういうおちゃらけた部分が淘汰されて、ある程度いまの〈申し訳〉の基本軸が出来上がったところで、宇多丸さんやギュウゾウさんや掟(ポルシェ)さんが加わったんですよね。
宇多丸 それが2000年くらいか。その頃は、モーニング娘。が盛り上がっている一方で、m-floとかRIP SLYMEが売れ始めたりと、クラブ・ミュージック・オリエンテッドなJ-POPがすごい充実していた時期だったんだよね。で、「こういう音楽をフロアで聴きたいな~」って思ってるんだけど、クラブはそういう状況に全然対応できてなくて。邦楽ですっげー面白いことが出来そうなのに、誰もやらないっていうフラストレーションがあった。じゃあ自分で〈歌謡曲ナイト〉とかやってみたいなあって言ってみるんだけど、それも何か違うんだよなあ……という。そんなときにミッツィーさんのミックスCDを聴いて「これだあ!」と。
ミッツィー みんなJ-POPにいい素材があるのはわかるんだけど、それをDJとしてどう調理するのかっていうのがわからない時期だったのかもしれない。

宇多丸 あと、CDJの普及も重要で、CDをアナログみたいに使えるっていうのが衝撃だった。「J-POPで普通に繋げばいいんだ」っていう。だから、そういう機材の進化と、日本の音楽シーンの充実とが合致した時期だったんだよね。あと、俺に関して言えば、ヒップホップの分野で正統的なことは一通りやって、なんかすげえバカなことをやりたいっていうタイミングで(笑)。
――いまの〈申し訳イズム〉みたいなものは徐々に作り上げられていったんでしょうか?
宇多丸 いや、ミッツィーさんの最初のミックスCDの時点でもう出来上がっていたと思う。でもミッツィーさんに言わせると、自身のスタイルに開眼するのは、その半年後くらいらしいけど。最初のミックスCDは割といまの俺のスタイルに近くて、BPMが徐々に上がっていって超アッパーに終わるような感じだったんだよね。それが次のミックスでは、曲ごとにBPMがすんごい上下する、いまのミッツィー・スタイルになっていた。こんなに上下するのはクボタタケシかミッツィーさんくらいのもんだっていう。
――確かにミッツィーさんのプレイの〈オール・ジャンル感〉はクボタタケシさんに通じるところがあるかもしれないですね。
ミッツィー 好きなDJですよ。渋谷HARLEMでやっていた〈SDP〉ってイヴェントによく行ってたんですけど、サザンをかっこよくかけてるなあと思ってた。
宇多丸 クボタくんは本当にDJの理念を体現する人だからね。クボタタケシとミッツィーさんのプレイに共通してるのは、ある種の悪意なんですよ。そこはやっぱり似てるんですよ。
――ミッツィーさんは、曲単体で取り出してみると「これはどうなんだろう……」って曲を効果的にミックスしてくることがありますよね。
宇多丸 フロアを一瞬、不満にさせることが出来る人はいいですよね。俺は怖くてあんまり出来ないんだけど。勇気がいるよね。

ミッツィー 盛り上がってると「ケッ」って思うんでしょうね(笑)。それでダーンと下げて。まあ親切心ですよ。「休みたいでしょ?」という。でも、宇多丸DJの4つ打ちグルーヴ感がうらやましく思うことはありますよ。「宇多丸……グルーヴあるじゃねえか」みたいなジェラシーは感じるかなあ。そういうプレイは俺にはもう出来なくなっちゃってるし。
宇多丸 いやいや師匠……。何をおっしゃいますやら。
――でも〈申し訳ないと〉のレギュラーDJは、みなさんプレイ・スタイルが違いますよね。
ミッツィー 掟さんは〈申し訳〉的というか、もう掟さんスタイルさんという感じだよね。
宇多丸 でも、掟さんがよく「自分は繋ぐ技術がないからぶっこみ(=カット・イン)で踊るだけ」なんて言ってるけど、ぶっこみがめちゃくちゃ上手いんですよ。繋いで重ねていくよりも、ぶっこみの方が難しいんじゃないかと俺は思っていて。センスも勇気もいるというか。
ミッツィー ぶっこんだときに音量が小さいとガクッとなるし、大き過ぎると恥ずかしいしね。
宇多丸 だから掟さんはぶっこみDJとして、実は相当にスキルが上がってる気がするんですよね。踊ってぶっこんで、踊ってぶっこんでってなかなか出来ないですよ(笑)。
ミッツィー 高等テクニックだよね。ある意味バトルDJ的な(笑)(続く)。
◆次回は10月30日(木)に掲載いたします!
〈PLANET 13th Anniversary Special Vol.3 [(有)申し訳ないと 11周年記念 at UTSUNOMIYA]〉
10月31日(金)宇都宮PLANET
開場/開演 22:00
料金:前売&HP予約 \2,500(1Drink込み)/当日 \2,500
-DJ-
ミッツィー申し訳 (代表取締役)/ギュウゾウ申し訳Jr. (電撃ネットワーク)/掟ポルシェ申し訳Jr.(ロマンポルシェ。)/オギぃ申し訳Jr./刑申し訳baby's
-SHOW-
荻田優「正義の味方」
〈(有)申し訳 OVERGROUND〉
11月1日(土)東京・三宿WEB
開場/開演 23:00
料金:\2,500(2Drink)
-DJ 申し訳ナイタズ-
ミッツィー申し訳 from (有)申し訳/宇多丸(RHYMESTER)/ギュウゾウ(電撃ネットワーク)/掟ポルシェ(ロマンポルシェ。)/GEE(緊急手術中により欠席)/オギぃ and 刑
このほかのスケジュールは申し訳ないとオフィシャルサイトにてご確認ください!
宇多丸氏のラジオにて、〈申し訳ないと〉DJ陣によるミックス・ショウ〈申し訳ないとフロム赤坂〉放送中!
●TBSラジオ(954Khz)「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」
毎週土曜日21:30~23:30
http://www.tbsradio.jp/utamaru/index.html
http://www.tbsradio.jp/utamaru/podcast/index.html
▼申し訳ないと、宇多丸の関連作品

雑誌「BUBKA」でのアイドルCD評論連載をまとめた、宇多丸の著作「ライムスター宇多丸のマブ論 CLASSICS」