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第35回 ─ まちからきこえる

連載
Mood Indigo──青柳拓次が紡ぐ言葉、そして……
公開
2008/10/02   00:00
更新
2008/10/02   17:48
ソース
『bounce』 303号(2008/9/25)
テキスト
文/青柳 拓次


一 郵便局
母親と保険の名義変更 

おばさん
「なんで名前を言わなければいけないのですか?ただ注意しただけです」

初老のおとこ
「名前を言いなさい!」

郵便局長が現れる 
「正常な業務ができないので、出て行ってください」

初老のおとこ
「あの人が何か言ってくるから、わたしは名前を尋ねていただけなんです」 

郵便局長
「あなたの話はもういいんです。出てってください」

初老のおとこは 口をつぐみ サインペンで 自分の手のひらに 文字を書きはじめる
手のひらを 郵便局長に 五秒見せる 

初老のおとこは出て行く

二 親子四人
コーヒーショップに入ってくる

兄はひとりでレジにむかう

三人は丸テーブルへ

父が洋菓子の箱を机にのせる

母があけると スイートポテトが出てくる

眼鏡の弟は笑顔になり 三人は食べはじめる

兄が コーヒーひとつ手にしてもどる

最初 母親が コーヒーに口をつける

それから 父

それから 弟

それから 兄も

PROFILE

青柳拓次
サウンド、ヴィジュアル、テキストを使い、世界中で制作を行うアート・アクティヴィスト。LITTLE CREATURESやDouble Famo-usに参加する他、KAMA AINAとしても活動している。Dou-ble Famousの結成15周年&デビュー10周年記念盤『HAPPY HOUR』がリリースされたばかり。