8月16日(中編)
K10 その後ですが、僕は椎名林檎をBGMに場内のインターネット・カフェで原稿を書き、EL-MALOへ向かいました。やっぱりアイゴンへの声援が凄かったですね。メンバーも豪華で、まずギターがA×S×Eさん。
土田 A×S×Eさんの衣装はもの凄いインパクトでしたねー。蛍光オレンジの長袖シャツに……。
K10 マッシュルーム・カットにサングラス。
土田 前から見るとマッシュルームというかショート・ボブなんだけど、後ろは束ねてた。きっと、お姫様カットなんですよ。柚木さんも全身真っ白で、アラビアン風に頭をタオルで覆って、さらに月桂冠みたいなのもかぶってるっていう。
K10 アイゴンはまたヘアバンドで登場ですよ。今度は水色で、2つ用意してたんだ、って驚いた(笑)。でも、音は素晴らしかったですねー。
土田 A×S×Eさんとアイゴンという暑苦しいギターを弾くふたりが揃っているから、濃厚でしたよね。
K10 極太なサウンドでした。あと、柚木さんはTシャツを破いて、客席にブン投げてましたね。
土田 あれはもう、ハード・ロックですよね。これがEL-MALOを観る最初で最後の機会なのかと思うと、切ないなあ。
K10 ……で、その後僕はLOSALIOSを観に行って。ブランキー復活の噂があって楽しみにしてたんですが、そこにもアイゴンがいました(笑)。今回は、彼とスカパラの加藤さんとのツイン・ギターで。曲によってはSOIL &“PIMP”SESSIONSのタブゾンビさんやROVOの勝井さんも入ったり。〈ライジング〉10周年スペシャルでしたから、メチャクチャ豪華でしたよ。ベンジーも登場して、ブランキーの“サリンジャー”“ガソリンの揺れかた”をやったんですけど、この時の客席の揺れ方は凄かったですね。一気にステージ前に人が殺到して。
土田 私もその場にいたら、殺到したと思う(笑)。
K10 ベンジーと中村達也がBLANKEY JET CITYの曲を演るのって8年ぶりぐらいだと思うんですが、息もバッチリ合っていて。やっぱりベンジーのドラムを叩くのは達也しかいないなぁって思いましたね(笑)。終わった後は呆然としてましたよ。
土田 ちなみに、その時のアイゴンのヘアバンドは?
K10 してませんでした、残念ながら(笑)。
土田 そうですか(笑)。では、次は私が語りますが、予告どおりに椎名林檎を観ました。私も含めてですが、たぶん、集まったお客さんは〈何をやるんだろう?〉っていう期待が凄くあったと思うんですけど、ヴァイオリン2本、あとチェロとビオラっていう編成の斉藤ネコ・クァルテットとピアノだけでの演奏でした。で、1曲目がバート・バカラック“Alfee”のカヴァー。〈SUN STAGE〉って舞台の両脇にスクリーンがあるじゃないですか。そこに歌詞が字幕みたいに流れてて、「ああ、映画的にきたんだな」って思った。その後は、映画音楽的なクラシカルなアレンジでセルフ・カヴァーを聴かせていくんですけど、中盤ではバカラックから提供された新曲を披露したりして、お客さんはみんな聴き入ってる感じでしたね。終演後、近くにいた女の子が「こういう人っているんだね~」って、うっとりと漏らしてたのが印象的でした。ホントに綺麗だったんですよ。音の作り方とかも、映画的な演出も本当に美しくて。ここでも表現者としてのプロ根性を見せてくれましたね。
K10 彼女が〈ライジング〉の第1回に出演した時は、斉藤ネコと彼女のふたりだけだった。今回は、その発展形だったのかもしれないですね。
土田 それから、teも良かったです。私、彼らのライヴを今回初めて観たんですね。で、思ったのは、これまで9mm Parabellum Bulletとかmudy on the 昨晩とかを「ライヴが凄い!」って紹介してきたけど、観る順番を間違えてたな、と(笑)。9mmとかは、当然teを見て育ってきたわけですし……残響の親玉は、それは大暴れでしたよ(笑)。だけど、メンバーは楽しそうにプレイしてるから、鋭くはあるんだけど開かれている雰囲気。お客さんにも「もっと来い!」みたいな感じでもの凄くアピールしてて。
K10 インスト・バンドでそれは珍しいですね。
土田 それをずっとやってるんですよ(笑)。ドラムも曲が終わるごとに立ち上がって拳というか、スティックを突き上げてるし。ちなみに、私はメモを手に持ちながら(笑)なぜか最前列で観てたんですけど、最後の方でベースの人が客席に下りてきて、お客さんとハイタッチをし出したんですよ。そこで「ハイタッチはマズい!」「スペシャに映るのもマズい!」と思って……。
K10 自重したんだ(笑)。
土田 はい(笑)。いままで観たなかで一番激烈なライヴだったかも。また絶対観たいです。
桑原 それでは日付を跨いで、次はゆらゆら帝国のステージ。僕と土田さんが観ました。
土田 ゆらゆらしましたね。
桑原 ゆらゆらしました。間奏でサイケな世界へと突入していくたびに、「キタキタキタ~」って盛り上がってました。
土田 深い時間帯も音に凄く合ってたし、ホントに頭のなかが空洞になってきた、みたいな感じで……ゆらゆらするんですよね(笑)。近くにいた女子は、「なんかコワーイ」って言ってましたけど(笑)。
K10 それ、褒め言葉なのかな?
土田 どうなんだろう? でも、そう言いながらも動かずじっと観ている、みたいな感じ。念願のゆらゆら体験でした。その後、私はサカナクションを観たんですが、これも凄くいいステージで。ファースト・アルバム『GO TO THE FUTURE』では電子的な面をそれほど強烈には出してなかったと思うんですが、セカンド・アルバム『NIGHT FISHING』ではかなりテクノに寄ってきてたので、どういうパフォーマンスを展開するのか楽しみにしていて。で、実際観てみたら、最初の何曲かは四つ打ちで繋ぎつつノンストップでアゲていく感じで、完全にフロア対応。何と言うか、レイヴ感を放ってました。
K10 ニューレイヴとかのダンス・ロックみたいな感じ?
土田 そういう部分もあるんだけど、ノスタルジックな歌モノの要素もあるんですよ。個人的には、全曲ノンストップのライヴを観てみたい。〈ライジング〉で言えば、〈MOON CIRCUS〉に出ててもおかしくないステージでしたね。今度、彼らは秋の〈渚音楽祭〉にも出るんですよ。デリック・メイとかと一緒にエントリーされてるんですけど、それが、彼らがどういう音を出していて、どういうパフォーマンスをするのかってことを象徴しているんじゃないかなぁって思いますね。
▼文中に登場した出演アーティストの作品