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第388回 ─ 1000のヴァイオリン

連載
NEW OPUSコラム
公開
2008/08/07   03:00
更新
2008/08/07   20:07
ソース
『bounce』 301号(2008/7/25)
テキスト
文/中谷 琢弥

ロックなヴァイオリニスト、勝井祐二が熱い

 リーダー・バンドであるROVOをはじめ、渋さ知らズへの参加やアルゼンチン音響派との一連のセッションなど、勝井祐二の通った後にシーンが生まれる、というのは決して過言じゃない。iLLやフルカワミキ作品への参加でも注目されたこの稀代のエレクトリック・ヴァイオリニストが、ROVOの最新作『NUOU』から間髪入れず、異なる2つのユニットで立て続けにニュー・アルバムをリリースした!

 まず、2006年の〈フジロック〉で大地さえ巻き込む超絶グルーヴを放ったマルコス・スザーノ/沼澤尚/勝井祐二/内田直之という反則なメンツによる『NO PORテO』。世界的なパンデイロ奏者のマルコス・スザーノとドラマーの沼澤尚によるリズムの応酬を、勝井のヴァイオリンが調和するようにカタルシスへと導く。狂暴なトリップ感を漲らせた内田直之のダブ・ミックスも特筆ものだ。

 一方、TWIN TAILでの勝井の旋律は、全霊をもって叩き込まれる中村達也のドラムと照井利幸の強靱なベースラインの間を切り裂くように響いている。それにしても、新作『すべては許されている』に充満する三者の衝動は凄まじい。同ユニットは前述の元BLANKEY JET CITY組と勝井に加え、映画監督の豊田利晃が映像担当として名を連ねているのも興味深く、映像版(DVD)も視野に入れているそう。そちらにも期待だ。