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第20回 ─ 下北沢と軽井沢

連載
Bar YAMAGA
公開
2008/07/17   23:00
ソース
『bounce』 300号(2008/6/25)
テキスト
文/〈Bar YAMAGA〉のバーテン

武藤昭平による、〈憧れのアーティストたちと酒場でいっしょに酒を飲んだら?〉――という深夜の妄想話!

 

 24時。チャック・ベリーとキース・リチャーズ、そしてウエノコウジと俺の4人で楽しく飲んでいる。が、今夜の宿をまだ見つけていない、来日したてのチャック。キースが言う。「俺ん家に泊まるかい?」「キースのウチはいやだ。だいたいお前のウチは、門から玄関に行くまでにまたタクシーがいるような距離じゃねぇか。噂になってるぞ、キース。お前が門と玄関の間の植え込みでよく寝てるって。自分でも家まで辿り着けないらしいな」「あぁ、だからキースさんはあまりウチに帰らずに、ここに入り浸ってるんすね?」と俺。「いやいや、そういうワケじゃないが……とはいえ、チャックが言うほど俺ん家はそこまでデカくはないぜ。マイケル・ジャクソンじゃねえんだから」とキース。そしてチャックの一言、「まぁ何とかなるさ、今夜の宿……」。

 別の話題になり、ウエノが口を開いた。「あの~すんません、皆さん。この後下北でDJが入ってるんで、そろそろ行かないといけないんすよ」「お、ウエノのDJか。聴いてみたいな。チャックは行くかい?」とキース。「いや、俺は行かん」。その時、店の表がにわかに騒がしくなった。どうやら酔っ払いが外に置いてあった台車で遊んでいるらしい。すると店員のおばちゃんが出てくるやいなや、「コラッ、酔っ払い! やめんかー!! 飲むならちゃんと店ん中に入れ~!!!」と叫んだ。そのインパクトのある〈YAMAGA〉の名物店員はティナ・ターナーである。「おお、ティナ。今日は店に入ってたか」と言うキースに、ティナ「あぁ、キース。また来てんの? 良かったらこの酔っ払いの相手もしてやってよ」と、さっき外の台車でいたずらをしていた酔っ払いをわれわれに紹介する。するとチャック「おい、ジョン! もう酔っ払ってんのか?」「おお、チャック!」……ジョン・レノンである。するとキース「なぁ、ジョン。今日チャックをお前のウチに泊めてやってくれないか?」「いいよ、軽井沢だけど」「よし、ウエノ。DJだろ。俺も下北沢に行くよ。いっしょに出よう」「じゃあ皆さんお先っす」と言うと、ウエノはキースと共に店を後にした。キースが最後に一言、「じゃあジョン、ムトウ。チャックをよろしくな」。チャックが俺に訊く。「ムトウ、軽井沢ってどこだ? 下北沢に近いのか?」「いや。かなり遠いですよ」。

……武藤昭平、あくまでも妄想の話。

深夜の妄想盤

MICHAEL JACKSON 『Thriller -The 25th Anniversary Edition』 Epic(2008)
史上最大のセールスを叩き出した名盤の25周年記念エディションも記憶に新しいMJ。彼の豪邸〈ネヴァーランド〉は千代田区に相当する面積というから、そりゃ流石のキースさんも敵わないのでしょう。が、現在売却中につき、おひとついかがですか?

TINA TURNER 『Simply The Best』 Capitol 
ドスの効いたド迫力ヴォイスで熱いソウルを歌い上げるティナさん。91年に登場した本ベスト盤に比べるとムキムキ度は落ちているものの、パワフルさは年々凄みを増すばかり。ちなみに店では、私もよく叱られています。とりあえず当店自慢の看板娘……ということにしておいてください。

PROFILE

武藤昭平
ジャズとパンクを融合させたオリジナルなサウンドで人気を博す伊達男音楽集団、勝手にしやがれのドラマー/ヴォーカリスト。7月2日にはレーベル移籍第1弾となる、オダギリ ジョー主演映画「たみおのしあわせ」のサントラ『ゼン・サマー・ケイム』(tear-bridge)をリリース予定(詳しくはP114へGO!)。また、〈RISING SUN〉を筆頭に今夏もたくさんのライヴを行うとのことで、そちらも乞うご期待! その他、バンドの最新情報は〈www.katteni-shiyagare.com〉で!