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第19回 ─ 荷物にスポットライト

連載
Bar YAMAGA
公開
2008/06/19   05:00
更新
2008/06/19   17:23
ソース
『bounce』 299号(2008/5/25)
テキスト
文/〈Bar YAMAGA〉のバーテン

武藤昭平による、〈憧れのアーティストたちと酒場でいっしょに酒を飲んだら?〉――という深夜の妄想話!

#4 〈荷物にスポットライト〉

 チャック・ベリーがセッションをしたいということで集まった4人。そのうち、まずはキース・リチャーズが帰され、次に俺にも〈帰っていいよ宣告〉がチャックから下され、ついにベースのウエノコウジとチャックの2人によるセッションが開始される。一応俺もウエノを誘った手前、彼一人をスタジオに置いていけないので見学というかたちでスタジオに残ることに。

 が、しばらくするとチャックはついにウエノにまで〈帰っていいよ宣告〉をしたのである。残ったチャックは爆音で一人ロックンロールを弾き語る。荷物をまとめたウエノは俺に一言。「チャックさん、わけわからん」「じゃあ、そのへんに飲みに行きますか。チャックさん、帰ります! ありがとうございました」と俺。するとチャック、「お、どっか飲みに行くのか? じゃあ、いっしょに行こう」。

 随分と話は長くなったが、こうした経緯でチャックとウエノ、そして俺の3人でここ〈Bar YAMAGA〉に飲みに来たのである。そして23時。さっそく店に入ると、キースが「おい! やっぱり来たか。先にやってるぞ」と合流。スタジオ帰りで荷物が多かったわれわれはお店に預かってもらうことにした。ところが、チャックだけは「俺の荷物にさわるな」と頑なに断る。キースも「チャック、他にもお客さんいるし、店にも迷惑が掛かるから荷物は預けたほうがいいんじゃないか? ギターとスーツケースの2つだけだろ!?」「ダメだ。俺の目と手が届くところに置かないと安心できん。ステージに上がる時も、俺はいつもステージ袖に荷物を置いてるんだ。しかもスポットライトを当てさせてな。誰が俺の荷物を盗んでいくかわからんだろ」とチャック。「わかった、わかった。じゃあチャックの来日に乾杯しよう」とキースの合図でみんなで乾杯をする。

 しばらく飲んでいると4人の仲もほぐれていき、俺とウエノの緊張も和らいできた。ウエノ「へぇー。チャックさんはいつもそんなスタイルなんすねぇ」「ああ。空港に降りたままの格好で会場に入り、その格好でステージに上がり、そのまま帰る」「流石です」。するとキースが言った。「そういえば今日はどこに泊まるんだ、チャック。ホテルは?」「あっ!」。チャックの額から妙な汗が滲んだ。

……武藤昭平、あくまでも妄想の話。

深夜の妄想盤

CHUCK BERRY 『Hail! Hail! Rock'N'Roll』 MCA(1987)
本作はキースさんが監督を務めたチャックさんのライヴ映画のサントラで、エタ・ジェイムズらを迎えて自身のヒット曲を気持ち良さそうに歌い上げる様がなんとも痛快な一枚。なお、映画本編では師匠に何度もリード・ギターを直されるキースさんの姿も確認できますよ!

KEITH RICHARDS 『Main Offender』 Virgin/EMI Music Japan(1992)
上掲のライヴでも大活躍しているスティーヴ・ジョーダンとワディ・ワクテルを共同プロデューサーに迎えたソロ2作目。なお、チャックさんのバック・バンドで名を馳せたピアニスト、ジョニー・ジョンソンが参加した粋なナンバーは日本盤でしか聴けませんよ~!

PROFILE

武藤昭平
ジャズとパンクを融合させたオリジナルなサウンドで人気を博す伊達男音楽集団、勝手にしやがれのドラマー/ヴォーカリスト。カヴァー・アルバム『LET'S GET LOST』(エピック)も好評リリース中。現在はオダギリ ジョーが主演を務める映画「たみおのしあわせ」のサントラ盤を制作中とのこと。その他の情報は〈www.katteni-shiyagare.com〉でチェック!