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第18回 ─ わがままチャック

連載
Bar YAMAGA
公開
2008/05/01   20:00
ソース
『bounce』 298号(2008/4/25)
テキスト
文/〈Bar YAMAGA〉のバーテン

武藤昭平による、〈憧れのアーティストたちと酒場でいっしょに酒を飲んだら?〉――という深夜の妄想話!

#3 〈わがままチャック〉

 21時。チャック・ベリー、キース・リチャーズ、ウエノコウジ、そして俺のセッションは続いている。相変わらずチャック・ベリーのナンバーをいきなりアドリブで合わせるだけだが……。そしてそのなかの一曲で、ロックンロールお決まりのイントロをチャックが弾き出した。それにキースも続く。「お、“Johnny B. Goode”か?」、俺は心のなかでそう思いながら演奏についていく。ところが、チャックが不満げに演奏を中断。「おい、“Little Queenie”だぞ。キース、イントロをどう弾いた?」。キースがいま演奏したとおりギターを弾いてみせる。するとチャック、「それは“Johnny B. Goode”だ」「あれ? じゃあこうかい?」とキースが同じようなフレーズをちょっと変えて弾いてみる。するとチャックが「それは“Roll Over Beethoven”だ。よく見とけ! “Little Queenie”はこうだ」とみずからお手本となってイントロを弾く。それに習ってキースが弾いてみるとチャックがまた言う。「だから、そこはチョーキングしちゃダメだって!」「いや、いまチャックが弾いたとおりにやったぜ」「俺はやってない」「やったって、チャック」「うるさい! これは俺の曲だ! 俺に従え!」。俺とウエノはもうどこに視線を向けていいのかもわからない。

 そんな時、チャックが突然キースに言った。「キース、今日はお前とのセッションに気が乗らない。悪いが帰ってくれ」。俺とウエノの顔色を窺い、しばらく黙っていたキースだが、「ああ、わかったよチャック。今日は帰るよ。じゃ、ムトウ、ウエノ! 後はよろしくな。何とかなるから」とついにくわえタバコでスタジオを出て行ってしまった。「あぁ、キースさん、俺たちだけでどうすれば……」。

 またセッションは再開され、ぎこちない演奏が続く。そしてしばらくすると、チャックが俺のところに近づいてこう言った。「ムトウ君だっけ? キミも帰っていいよ。今度はTHE NEATBEATSとかTHE BAWDIESといっしょにやってみたいな。とりあえずウエノ君、続けようか!」「チャックさん。日本のバンド、よく知ってますね」……俺が荷物をまとめながらウエノを見ると〈武藤、頼むから一人にしないでくれ〉というわかりやすいジェスチャーを、涙目と共に俺に送っていた。

……武藤昭平、あくまでも妄想の話。

深夜の妄想盤

THE NEATBEATS 『ROLL ON GOOD!!』 BMG JAPAN(2008)
ライヴでも頻繁に“Little Queenie”を演奏するほど大のチャック好きで知られる彼らだけあって、御大直々のご指名にさぞかし喜んでいるのでは? そんなバンドの最新作は、科学技術に真っ向から勝負すべくモノラル・レコーディングが施されたロックな一枚! 痺れます!!

THE BAWDIES 『Awaking of Rhythm And Blues』 SEEDZ(2008)
50~60年代の音楽をこよなく愛する若者4人組に目をつけるとは……チャックさんもやりますね。確かに宴にピッタリの陽気な“I BEG YOU”なんて、モロにチャック・マナー! 実は〈Bar YAMAGA〉でもコレを流すとよくお酒が出るんで、重宝させてもらってます。

PROFILE

武藤昭平
ジャズとパンクを融合させたオリジナルなサウンドで人気を博す伊達男音楽集団、勝手にしやがれのドラマー/ヴォーカリスト。カヴァー・アルバム『LET'S GET LOST』(エピック)の興奮も冷めやらぬなか、バンドは現在ニュー・アルバムの制作に取り掛かっているとのこと。また、5月30日(金)には今年最初のワンマン・ライヴ〈BONE MACHINE CIRCUS〉を東京・赤坂ブリッツで行う予定。その他のバンドの最新情報は〈www.katteni-shiyagare.com〉で!