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第324回 ─ WATCH "SENSUOUS"

連載
NEW OPUSコラム
公開
2008/03/27   17:00
更新
2008/03/27   17:48
ソース
『bounce』 297号(2008/3/25)
テキスト
文/村尾 泰郎

コーネリアスの『SENSUOUS』をより深く理解できる映像集!


  コーネリアスの最新DVD「SENSURROUND」は、アルバム『SENSUOUS』(2006年)のプロモ・クリップ集――でありながら、実はもっと深い関係にある。本作は『SENSUOUS』に収録された全12曲のクリップをパッケージしたもので、そのうちの10曲では辻川幸一郎という映像作家が監督を務めている。小山田圭吾と学生時代からの友人でもある辻川は、これまでコーネリアスのヴィジュアルのほとんどを担当してきた。そもそも小山田は辻川にアルバム制作時から音を聴いてもらい、2人で映像のイメージを練り上げていったという。つまり「SENSURROUND」は、観る『SENSUOUS』なのだ。

 そんな「SENSURROUND」のなかでひときわ話題を呼んだのが、文化庁メディア芸術祭の〈エンターテインメント部門〉で優秀賞を獲得した“Fit Song”。ワンルームを舞台に角砂糖が空中でダンスを踊り、コインが螺旋を描く。すべての動きはビートにピタリと合っていて、音と映像の驚異のセッションが楽しめる。加えてオープニングとエンディングのカットが同じで、映像をループできるようになっているのもミソ。その他、“Music”では被写体の中央に鏡を置いてシンメトリーに見せるミラーリング技法が導入されている。鏡のトリックは“Like a Rolling Stone”でも使われているが、ここでは回転するフィギュアを万華鏡仕掛けのセットに並べ、サイケデリックな映像を展開。そんなふうにマッドに作り込まれながら、限りなく日常に近いのが辻川作品の持ち味であり、音楽とのシンクロ具合は絶妙だ。

 こうした映像に高木正勝やgroovisions製のプロモ・クリップが加わった「SENSURROUND」には、それぞれの作品に共通したイメージや色が散りばめられている。そうすることで、全体がコンセプト・アルバムみたいにデザインされているのも『SENSUOUS』と共通しているところだ。さらに本作と併せて、2002~2004年に国内外で行われたツアー風景を編集したライヴDVD「from Nakameguro to Everywhere tour '02-'04」も同時リリース。コーネリアスの魅力をサラウンドで楽しもう!