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第314回 ─ GREW FROM CONCRETE

連載
NEW OPUSコラム
公開
2008/03/13   00:00
更新
2008/03/13   17:27
ソース
『bounce』 296号(2008/2/25)
テキスト
文/一ノ木 裕之

いまもっとも注目すべきストリートの音と言葉たち……OKIとBRON-Kがそれぞれソロ作をドロップしたぞ!!

 SEEDAとDJ ISSOによるミックスCDシリーズ〈CONCRETE GREEN〉に端を発した日本語ラップの新たなムーヴメント。そこに参加したアーティストたち個々の作品リリースと共に、その火種は昨年からますます大きくなっているが、1月にリリースされたSEEDAの新作『HEAVEN』と歩を合わせるかのように、シリーズに大きくフィーチャーされてきた2人のラッパーが新作を相次いでリリースした。まず、昨年ファースト・アルバム『LIFE SIZE』を送り出したGEEKのOKIが、今度は初のソロ・アルバムを完成させた。その『ABOUT』は『LIFE SIZE』でも見せた巧みな描写力をぐっと映像的に見せる一作で、曲ごとにアプローチする題材や相手を明快にし、リリックをよりストレートに伝えることに成功している。

 一方、NORIKIYOやTKCが一足先に単独作を発表していたSD JUNKSTAからは、グループ随一とも言われる実力派のBRON-Kがついに『奇妙頂来相模富士』なるソロ作をリリースした。くぐもった声で無骨に差し出されるラップは、彼自身と彼の置かれた環境を冷ややかに眺めてシャープに切り取られる言葉も相まってやはり秀逸。歌っぽいフロウが楽曲の陰影をぐっと深くする“何ひとつうしなわず”や“寒空”などにおけるフックの鮮やかさからもその力の程は窺えるはずだ。

 先の見えぬ日々にヒップホップを携えてもがく自身の姿を投影する2人の音楽は、時代の波や街の風景をそこかしこにくっきりと映し込んだストーリーともいうべきもの。それぞれのスタイルや表現にこそ違いはあれど、生活と無縁には生まれ得ない音楽にその身を託しているのは同じだ。