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第16回 ─ キースの誘い

連載
Bar YAMAGA
公開
2008/03/06   00:00
更新
2008/03/06   17:56
ソース
『bounce』 296号(2008/2/25)
テキスト
文/〈Bar YAMAGA〉のバーテン

武藤昭平による、〈憧れのアーティストたちと酒場で酒を飲んだら?〉――という深夜の妄想話が三夜目に突入!

#1  〈キースの誘い〉

 翌日の夜中。チャック・ベリーと俺、そしてウエノコウジ(Radio Caroline)の3人で、いままさにここ〈Bar YAMAGA〉に酒を飲みに入ろうか、というところ。

 ではなぜこの3人なのか? それまでの経緯を話さねばなるまい。昨日、いや今朝までいっしょに飲んでいたキース・リチャーズ(ローリング・ストーンズ)の誘いで、チャック・ベリーとスタジオに入ることになった俺。キースはスタジオに入る前、事前に「ロックンロールが好きなベーシストも用意しといてくれ」と俺に言ってたので、急ではあったが知り合いのベーシスト数人に連絡。連絡が取れて、さらに急なスケジュールにも対応できたのがウエノコウジというわけだ。

 そして19時。キース、ウエノ、俺の3人で小さなスタジオに入り、セッティングをしてチャックを待つことに。「キースさん、チャックさんは何時頃に来ますかね?」「わからんがもうすぐじゃないか? たぶんいま頃、成田空港からタクシーを飛ばしてると思うぜ」「え? 今日、日本に着くんですか?」「ああ。チャックは気まぐれだからな。昨日チャックと電話してたら〈キースは日本にいるのか? じゃあ、俺もいまから行く〉っだってよ」「アメリカにいたんでしょ? いまから行くっていう距離じゃないような……」「それよりムトウ、あちらのベーシストは?」「あ、はじめまして。ウエノと言います。よろしくっす」。自己紹介をするウエノにキースが訊く。「君はロックンロールは好きか?」「はい、もちろんっすよ」というウエノにキースが一言。「じゃあ、たぶん大丈夫だな……」。

 そうこうしているうちにチャック・ベリーがスタジオに到着。袖が焦げ茶色のベージュのスーツ、ピンクのドレス・シャツにループタイ、荷物はスーツケースとギターの2つだけ。そんなイデタチのチャックにキースが語りかける。「よう、チャック。久しぶり。タクシー早かったな。高速は混んでなかったのかい?」「成田エキスプレスっていう電車で来た。乗ったタクシーがシロタクだったらどうするんだ?」「成田空港にシロタクはいないと思うが」と言うキースにチャックが言う。「ところでキース、この日本人2人は誰だい?」。いよいよキースに紹介されるわれわれ――。

武藤昭平、あくまでも妄想の話。

深夜の妄想盤

Radio Caroline 『extremes』 トライアド(2007)
ウエノさん、ギョガンレンズのPATCHさん、THE NEATBEATSの楠部さんによる、いま日本でもっともロールしているロック・バンド。パンクもガレージもロックンロールの子孫なんだとういうことを改めて証明してくれたこの最新作は、殺傷能力抜群の劇物につき、取扱いにはご注意を!

ミッシェル・ガン・エレファント 『CA-SANOVA SNAKE』 トライアド(2000)
そのウエノさんが在籍していた4人組も根っからのロックンロール信者として知られ、チャック・ベリー“I'm Taking About You”のカヴァーにだって果敢に挑戦していたりも。重心低めのベース、熱のこもった歌声、パワフルなドラム、やかましいギター――痺れます!

PROFILE

武藤昭平
ジャズとパンクを融合させたオリジナルなサウンドで人気を博す伊達男音楽集団、勝手にしやがれのドラマー/ヴォーカリスト。カヴァー・アルバム『LET'S GET LOST』(エピック)も好評リリース中。3月22日(土)に富山・福野文化創造センター円形劇場ヘリオスでSOIL&"PIMP"SESSIONSとのジョイント・ライヴの開催が決定しているほか、今年もガッツリとライヴ活動を展開していく予定。その他、バンドの最新ニュースは〈www.katteni-shiyagare.com〉で!