ドクター・ジョン
ニューオーリンズR&Bの伝道師にして優れたピアニスト。彼が作り出すユニークなルーツ・サウンド、特に名作『Gumbo』に込められためくるめくニューオーリンズ・ビート・マジックは、かつて細野を大いに魅了。その影響は細野流エキゾ・サウンドの決定版である75年作『泰安洋行』(クラウン)といった作品に結実した。細野にとっては〈エキゾ・ドクター〉といえる存在であった彼も『泰安洋行』を聴いていたく感銘を受け、YMOの渡米時には細野のもとを訪ねてセンスの良さを褒め称えたという。さて今回ドクターは、細野の93年作『メディスン・コンピレーション』の収録曲“AIWOIWAIAOU”を、エキゾなニューオーリンズ・ファンクに料理し、両者の熱いシンパシーが感じられる一曲に仕上げている。ちなみに、細野はフレンズ・オブ・アースの86年作『セックス・エナジー・アンド・スター』で、ドクターの“Right Place Wrong Time”をカヴァーしていたこともある。
ヴァン・ダイク・パークス
ブライアン・ウィルソンとの共同作業をはじめ、ウェストコースト・ロック/ポップス・シーンを裏で支えてきた偉大な音楽家/プロデューサーであり、同世代ながらも細野にとっては尊敬する先生といった存在。両者は、彼がはっぴいえんどのLA録音作『HAPPY END』(ベルウッド/キング)をプロデュースしたときからの仲で、カリプソやレゲエやニューオーリンズR&Bなどをミックスさせた超トロピカルなアルバム『Discover America』は、細野が〈チャンキー・ミュージック〉を確立するうえで多大な影響を与えている。そんな彼は第1弾にも参加しており、“Yellow Magic Carnival”を見事にカヴァーしてみせ、「生きていてよかった」と細野を感激させたそうだ。今回は細野のノスタルジー趣味を満開させた一曲“ろっかばいまいべいびい”のカヴァーにおいて、ハース・マルティネスのバックでアコーディオンをプレイしている。
ハース・マルティネス
70年代アメリカン・ロック界きっての粋人。ジャズやソウルを基にしたメロディー&リズムメイキングのセンスは90年代にわが国で再評価されて人気を呼んだ。細野は彼のファンであり、21年ぶりに復活を果たした98年には自身のラジオ番組に招いて、ハースの“Slowly”をセッションしたのだった。ここではヴァン・ダイク・パークスをバックに従え、細野の73年作『HOSONO HOUSE』(ベルウッド/キング)収録の“ろっかばいまいべいびい”を、得意のボサノヴァ・アレンジでお洒落に料理している。
坂本龍一
細野の音楽を知り尽くした彼はYMOの元同僚で、HASYMOの現同僚。第1弾では嶺川貴子&コーネリアスとのコラボで参加し、ここではフェネスと2人で細野の85年作『コインシデンタル・ミュージック』(テイチク)収録の“ノルマンディア”をカヴァー。TVCMで使われていたこの原曲、実は〈戦メリ風なものを〉という依頼で書いたものだそう。そんな曲をトリビュートの場で選ぶ教授の茶目っ気が微笑ましい。
大貫妙子
日本を代表するシンガー・ソングライターのひとり。シティー・ポップの歌姫としてソロ・デビューしたときから、長きに渡って細野のバックアップを受けてきた。また彼女も数々の細野作品のバック・コーラスを担当し、両者はお互い良き理解者といった様子。そんな彼女が今回歌うのは、細野の78年作『はらいそ』(アルファ/ソニー)に収録されている“ファム・ファタール”。マルコス・スザーノらをバックにしたブラジリアン・スタイルで原曲の異国情緒を巧みに自分流へと変換させ、細野の楽曲に対する理解度の高さ&愛情度の深さを見せてくれる。
サーストン・ムーア
第1弾に参加のジム・オルークからバトンタッチされる形で、NYアングラ・ロック・シーンの老舗バンドであるソニック・ユースの大黒柱が登場。今回の参加者のなかでもっとも異色な存在と映るかもしれない彼だが、実は日本のロック通であり、細野ファンだったようだ。ここではYMOの81年作『テクノデリック』収録の“灰色の段階”をカヴァー。メタリックなギター・サウンドの向こうから、ノイズ混じりの賛辞が聞こえてくる。
アトム・ハート
YMO信奉者であるチリ在住のテクノ・アーティスト。細野とはHATというユニットを組み、アルバムを2作発表している。2006年にはセニョール・ココナッツ名義でのYMOカヴァー集『Yellow Fever!』でふたたび細野と共演。今回もセニョール・ココナッツとして、『はらいそ』収録の“東京ラッシュ”カヴァーに挑んでいるが、コッテリしたラテン・テイストが施されているこの曲を聴いて細野のほくそ笑む顔が目に浮かぶ。
田中フミヤ
日本が誇る無敵のテクノ番長は、半野喜弘と青木孝允とのトリオ(HANNO+FUMIYA+AOKI)で参加。“インソムニア”(原曲はYMOの79年作『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』に収録)のカヴァーにおいて、日本におけるテクノのオリジネイターである細野への熱いリスペクトをクールに表現している。自由気ままにテクノのフィールドを駆け巡っている彼は、電子音楽のさまざまな分野をスイスイと横断し続ける細野からいろんな刺激を受けているに違いない。