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第24回 ─ 藍錆色の茶葉

連載
Mood Indigo──青柳拓次が紡ぐ言葉、そして……
公開
2007/11/08   01:00
更新
2007/11/08   17:32
ソース
『bounce』 292号(2007/10/25)
テキスト
文/青柳 拓次

 中国の茶こし付き湯のみに三年番茶を入れ、湯をそそぐ。しばらく待って湯のみのフタをとり、陶器の茶こしを持ち上げ、湯のみのふちへ斜めに引っかけるとお湯が切れ、なかには赤茶色の番茶がのこる。ほんとうは、薬缶で煮出したほうが味も香りもよろしいのだけど、スタジオなどの外出先では、この方法が手間をとらない。

 この茶こし付き湯のみは、鹿児島の「民芸茶寮かねじょう」の御主人から頂いたもの。我が家には2セットあって、一つは蓮の花、もう一つは釣り師が描かれている。
 
 コーヒーの香りがする音楽は想像しやすい。ショーロ、ボレロ、バチャータ、カントリー・ブルース等々。

 さて、お茶となると?

 されば、この春、上海のアスターホテル(浦江飯店)のロビーを歩いていたとき、後ろから「あれ、青柳くん?」と声がかかる。振り向くと、塚本サイコさんがそこにいた。

 彼女は「デザートカンパニー」や「森のガクショク」という人気飲食店をプロデュースする傍ら、ミュージアム・オブ・プレートとして音楽活動を行っている。1999年に「茶音」というタイトルのアルバムが発表されたとき、彼女の名付けのセンスにとても感激した憶えがある。

 お茶をいただくことは、とても人間的な行いと時間です。

 わたしが喫茶店に入ると何をしているか思いかえす。

 手帖を広げて予定の確認。手に入れた古本をめくる。新聞に目を通す。歌詞を覚える。トイレにいく。ラジオやコラムの原稿を書く。もちろんお茶も……。

 お茶ということばのもつ「ゆったりした時間」というイメージとは程遠くもあるが、これも一つの人間的な状態なのだろう。

PROFILE

青柳拓次
サウンド、ヴィジュアル、テキストを使い、世界中で制作を行うアート・アクティヴィスト。LITTLE CREATURESやDouble Famousに参加する他、KAMA AINAとしても活動中。本名でのファースト・アルバム『たであい』が11月7日にリリースされた。