EGO-WRAPPIN'のヴォーカリスト、中納良恵からファースト・ソロ・アルバム『ソレイユ』が届けられた。7人のアーティストとの共同作業やピアノの弾き語りスタイルなどのトピックを持った今作は、彼女のパーソナルな魅力が十二分に表れたポップ・アルバムに!!
She Sings Her Own Songs
神懸かり的で野性的で圧倒的な迫力を持ったEGO-WRAPPIN'のヴォーカリストとして、また最近ではTHA BLUE HERB『LIFE STORY』にも客演するなどひとりのシンガーとしての顔も持つ中納良恵。そんな彼女の初となるファースト・ソロ・アルバム『ソレイユ』は、ジョニ・ミッチェルやリッキー・リー・ジョーンズなど70年代のアーティストにも通じる、至極真っ当なシンガー・ソングライター・アルバムとなった。関西の知る人ぞ知る音楽家である戸張大輔のカヴァー以外、収録曲はすべて彼女自身の手によるものだが、今作は彼女のピアノによる弾き語りの原曲を、7人のミュージシャンとそれぞれ共同アレンジ&プロデュースするというスタイルを取っている。ビートルズのカヴァー・アルバム『Apple of her eye りんごの子守唄』でもコラボ経験済みの鈴木惣一朗、JUJU KNEIPPやDouble Famous、フアナ・モリーナの前座を務めたセッション・バンドなどで昔から親交の深いLITTLE CREATURESの青柳拓次と栗原務、エゴのレコーディングにも参加経験のある地元・大阪の同郷であるトウヤマタケオ、安藤裕子らのバックやunkieでも活躍するTokieと、くるりやPolarisのサポートに加えてTHE CORNELIUS GROUPやソロ・プロジェクトのmi-guでも活躍するあらきゆうことそれぞれ2曲ずつ、ZAZEN BOYSの向井秀徳とは彼の単独アレンジで3曲コラボを果たしている。基本的には彼女の綺麗な歌声と美しいメロディーとピアノが主役で、どの曲も静謐さを醸し出す音数の少ないシンプルなアレンジが施されているが、向井と組んだ曲はスペイシーなギターと乾いたドラムが効いたニューウェイヴ風で異色の出来映えとなっている。
中納良恵というひとりの女性のちょっとファニーで不思議でマイペースといった、エンターテインという意味での非日常ではなく日常のパーソナルな感覚がくっきりと浮かび上がった今作からは、大気そのものやクリアな水みたいな透明感のある淡いブルーといった色彩の印象を受ける。掴めそうで掴めない空気そのものというか、ここにいながらにして同時にどことも繋がっている感覚というか……。時空を自由に跳ね回る空想的で神秘的な歌詞や、慈愛に満ちた優しい歌声によって普遍的な魅力を湛えた今作は、最高品質のポップ作品として幅広い層のリスナーの心に訴えかけることだろう。