II では、実際に聴いてみよう!
SANTANA 『Abraxas』 Columbia(1970) ラテン・ロックとは何ぞや?と尋ねれば、ヨチヨチ歩きの子供だってこの2作目を差し出すってなぐらいの決定版だ。情熱的なギターやニュー・ロック的なサウンド・デザイン、野生的なラテン・ビートがグチャッとミックスされ、めくるめく官能的世界が誕生。ロック史に残る名盤でもあるね。
MALO 『Malo』 Warner Bros.(1972) カルロスの弟、ホルへ・サンタナが組んだこの多国籍バンドは、まさにサンタナの弟分的存在。が、茶目っ気、粋がりぶりなどは兄貴たちを凌ぐものがあった。音楽性も極上ハイブリッドでソウルやファンクをグイッと呑み込みラテン風味で味付け、ストリート感覚溢れる音を生み出したんだ。
AZTECA 『Azteca』 GNP Crecendo(1972)サンタナにいたコーク・エスコヴェドと弟のピート(シーラ・Eのパパ)らが71年に結成したバンドの1作目。音楽のスケール感はサンタナとタメを張るもので、分厚いラテン・ロックが展開される。ニュー・ソウル色が強くなった2作目も含め、フリー・ソウル・シーンでも人気を得たね。
EL CHICANO 『This Is...El Chicano』 Varese Sarabande(1977) イーストLA出身、レア・グルーヴ・ファンにもお馴染みのバンド。フロストの出世作“La Raza”は彼らの“Viva Tirado”をサンプリングした、って話もよく知られているか。ローカルな匂いを放つちょいやさぐれたラテン・ソウルがたまらなく香ばしいんだ。
SAPO 『Sapo』 Arista(1974) リーダーのリチャード・ビーンはマロの元メンバー。74年に結成されたこのバンドは、このガマガエル・ジャケの唯一作によって、ラテン・ロックを語るうえでの重要チームとして認知されることに。闇雲なパワーが熱風を運んでくる超ファンキーな一枚だ。再結成して最近も活動を行っているよ。
ERIC BURDON & WAR 『Eric Burdon Declares War』 Avenue(1970) LAにやってきたエリック・バードンが黒人バンドをバックに歌いたいと願っていたところ、出会ったのがウォーだった。当時の邦題は〈宣戦布告〉。彼らのラテン・ロック曲と言えば本作の“Spill The Wine”で、真っ黒なラテン・リズムが耳と腰を打つ!
TIERRA 『Tierra』 20th Century/BARRIO GOLD(1973) 元エル・チカーノのサラス兄弟によるバンドにして超ビッグネーム。血沸き肉踊るダンス・チューンも良いが、ヒット曲“Together”に代表されるコーラス・ワークの上手さも彼らの魅力の一つで、超スウィートなソウル・ナンバーが多数あり。最近の作品も必聴だよ!
VILLAGE CALLERS 『Live』 Rampart(1968) サンタナよりも先に“Evil Ways”をヒットさせたバンドだ。マーヴィン・ゲイやローラ・ニーロのカヴァーが並ぶ本作は、猥雑で陽気なパーティー・ナンバーが次から次へ繰り出され、冷静に聴くことが困難。チカーノの熱きソウルが詰まった一枚として愛されているアルバムだね。
BLACK SUGAR 『Viajecto Nuevo Medios』 これは60年代後半から活動していたペルーのバンドの編集盤。シカゴっぽいブラス・ロック風味の楽曲などが並んでいるが、全体のテイストは同時代の西海岸系ラテン・ロック・バンドに非常に近いものがある。どことなく全体的に素朴さが漂っているのはやっぱお国柄か?
BENITEZ & NEBULA 『Night Life/Ess-ence Of Life』 Vampisoul 東海岸の代表選手といえば、このエディ・ベニテス。サンタナ・マナーのギター・プレイでライト感覚なラテン・ロックを披露する。美味なるメロウ・チューンが魅力で、ナンシー・オニールのヴォーカルが入ったグルーヴィーな“We Are The One”など昇天もの!
WILLIE BOBO Bobo 『Motion』 Verve(1966) ラテン・ロックに繋がる道として挙げたいのが、NY出身の名パーカッショニストであるミスター・ボボのこの一枚。ファンキーなブーガルー調の“Evil Ways”は後にサンタナがカヴァーしてヒット、アンセム化する。ミスターもまたカルロス同様にゴッタ煮好きな音楽家であったね。
LOS LOBOS 『How Will The Wolf Survive?』 Universal(1984) イーストLAのこのバンドは、ラテン・ロック・スピリットを今に伝える最重要バンド(結成は73年)。R&Bや伝統的なメキシカン音楽やその他いろんなものを呑み込んだ雑食性の高い音楽を作り続けている。存在感も含め、その〈ぶっとさ〉は比類なきものだね。