フランスで話題騒然! シャンソンとヒップホップを結びつける新たな詩人が登場!!

このたび2作目『Gibraltar』の日本盤がリリースされたフランスのラッパー、アブダル・マリック。日本ではまだまだ認知度の低い彼だが、個性的なパフォーマンスが本国では相当な人気で、かの国民的スター、ジュリエット・グレコとオランピア劇場で共演したほど! シャンソンの歌伴やクラシックのピアノ・ソナタなんかを想わせる気品漂うピアノ演奏やジャジーな4ビートをバックに、次々と言葉を重ねていく彼独特の音楽世界は、従来の〈フレンチ・ラップ〉と比べても抜きん出ている。その表現方法は、ヒップホップというよりは〈スラム〉と言ったほうがしっくりくるのである。
さて、〈スラム〉とは80年代のシカゴで生まれたスポークン・ワード(ポエトリー・リーディング)の一形式だ。日本でも98年の映画「スラム」やソウル・ウィリアムスをとおしてご存知の方も多いかと思うが、フランスでもここ10年ほどの間に急速に〈スラム〉のシーンが根付いた。以前はN.A.P(New African Poets)というヒップホップ・グループで活動していたマリックはこのシーンと出会い、〈スラマー〉としての方向性を見定めたという。
もともとパリでコンゴ系移民の2世として出生、少年時代をストラスブール郊外の貧しい地域で過ごして、周りの多くの不良がそうであったようにイスラム原理主義に傾倒していたのだが、突如スーフィズムに改宗。といった一筋縄ではいかない経歴を持った彼が〈スラム〉を通じて表現すること、それは移民としての辛い境遇だが、その言葉をミュゼットやジャズといったさまざまな音に乗せることで、人種やポジションを越えた普遍的なメッセージとして人々に伝えているのがすごいところだ。彼が敬愛するジャック・ブレルの盟友、ジェラール・ジュアネストをはじめ、ケレン・アン、マチュー・ボガートなどの才人を多数集め、ひとつのジャンルに括られることを拒絶する音作りをしており、メッセージ性の強いリリック(日本盤はもちろん対訳付き!)と共にじっくり味わってみたいところ。言ってみればシャンソン×朗読という古典的手法同士の掛け算にヒップホップの姿勢を足すことで生まれた新しいフランス音楽だろう。
▼『Gibraltar』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

マチュー・ボガートの2005年作『Michel』(Tot Ou Tard)