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第17回 ─ 紅碧の月

連載
Mood Indigo──青柳拓次が紡ぐ言葉、そして……
公開
2007/04/19   00:00
更新
2007/04/19   17:30
ソース
『bounce』 285号(2007/3/25)
テキスト
文/青柳 拓次

 サイパンで皆と空を見上げると、月がわらっていた。それから、あっという間に沖縄に辿り着くと、まだ月はわらいっぱなしだった。

 女性は太陽ではなく、月だとおもっていたら、男は太陽神で、女は月神だと「神の島-久高島」でおしえてもらう。

 熱帯の月はやさしい。眠ったり、騒いだり、想いに耽ったり、好きなことをしなさい、風邪ひかないから、と明かりをくれる。

 月のような女性は素敵だ。いままでのわたしは、そんな女性の月光があたる場所を歩いてきたようなもの。願わくば、あの世へ行くときも月を仰ぎながら。

 かつて、「月の光」という曲をよく聞いた。わたしは、優美なメロディーが好きだ。だから、クラシックで好きな曲はというと、有名且つ名曲と云われるものが多い。母親がギター弾きなので、レパートリーであったスペインと南アメリカのクラシックは、胎内にいるころから聞いていた。しかし、自分から聞いた最初のクラシックはサティで、その次に聞き込んだのは「月の光」を書いたドビュッシーというぐあいにフランス産だった。

 こんな話がある。スタンリー・キューブリックが「2001年宇宙の旅」で、いつまでもサウンドトラックが古臭くならないようにとクラシックを使うことに決めた。クラシックは過去と未来を同時に響かせるのだ。

 チャック・ベリー「Havana Moon」、ヘップバーン「Moon River」、プレスリー「Blue Moon」、トム・ウェイツ「Grapefruit Moon」、わらべうたの「うさぎ」……どうして月を題材にした音楽は美しいのだろう。子守り歌がわたしにとって最上の音楽だとしたら、それにつづくのは月のうた。
 
 最後に短い詩を。

月のような女性
その 月明かりに照らされ
自分の影を描いてゆこう

PROFILE

青柳拓次
サウンド、ヴィジュアル、テキストを使い、世界中で制作を行うアート・アクティヴィスト。LITTLE CREATURESやDouble Famousに参加する一方、KAMA AINAとしても活動中。上記オフィシャル・サイトの他、〈www.myspace.com/clubkamaaina〉では“the coo coo bird 1”の試聴などができます。