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第10回 ─ 桜編!!

連載
iLL presents ムー 帝 国 か ら の プ レ イ リスト
公開
2007/03/14   17:00
更新
2007/03/15   20:51
テキスト
文/小野田 雄

ファースト・アルバム『Sound by iLL』をリリースしたiLLによる語り下ろしオリジナル新連載がコチラ!! iLLこと中村弘二が、地球や宇宙のさまざまな深い神秘について語りつつ、そのシチュエーションにピッタリの5曲をリストアップしてくれます。神秘はどこにでも転がっている?かもしれない? 第十回目のテーマは〈桜〉編。下の〈iLLなプレイリスト〉を参照しながらどうぞ!!


  ああ、もう春か……(何やら忙しいらしく、ぼんやりしているナカコー)。今回のテーマ〈桜〉は難しかったんだけど、イメージ的にはあったかくて、また新しいことが始まる、みたいな感じ。俺、花粉症でもないし、この季節は花見もするんだけど、そういう習慣って東京に来てからだし、その花見にしたって、(以前所属していたレコード会社)Dohbのメンバーに会って、ただ呑むだけだからね。春らしいことを特にないんだよなぁ。え、テーマがストレート? ん、疲れてるって? ハハハハハ……バレちゃった。俺にとって今年の春は……う~ん、仕事に明け暮れると思う。多分、春だ何だっていうことはあんまり思わなくなるんじゃないかな。だって、もう3月なのにこっちはまだ1月気分なんだもん(笑)。バンドが解散した直後とか、去年は仕事がないからのんびりしてたけど、だんだんやることが増えてきたね。まぁ、でも、今年は色んなミュージシャンと接点を持ちたいから……(またどこかに思いを馳せるナカコー)、ヤバいね、気を取り直して行きましょう。

  日本でもCMで使われているけど、この曲って、あったかい曲だなと思ってたから、今回のイメージに合ってるなってことで、最初に思い浮かんだんだよね。この人たちって、レッド・ツェッペリンのトリビュート盤にも参加しているから、ヴォーカルのリンダ・ペリーはロバート・プラントが好きなんじゃない? ヴォーカルを聴いてるとそんな気がするな。このあったかい感じはコードの旋律が大きいだろうし、木のあたたかみがある音なんだね。自分の曲でもそういう仕掛けをすることもあるけど、あんまりほのぼのした、あったかい曲はボツにしがちなんだよね。だって、20代でそんなにほのぼのされてもねぇ、それは30代後半にでもやればいいじゃんっていう。個人的には若い時って、尖ってたり、ぐちゃぐちゃしてる方がいいんじゃないかなって思うけどな。まぁ、そういう曲を聴くのはきらいじゃないよ。
 

  この曲を最初に聴いた時、アイディアがすごい詰まってるなって思ったし、「売れるかどうかは知らんけど、これでしょう!」って、自信たっぷりな感じというか、決定的な曲なんだっていうことが意識的に聞こえたんだよね。新しいアイディアが集結して、花が咲くような感じ。俺ね、実はコーネリアスをちゃんと聴いたのってこの曲が最初で、フリッパーズ・ギターも名前はもちろん知ってたけど、どういう音楽をやってるのか、よく分かってなくて。でも、この曲を聴いた時、「あ、面白いな」って素直に思った。小山田くんの印象は、一度だけ愛葉さんのレコーディングで小山田くんがギターを弾いて、愛葉さんが歌って、俺がコーラスを付けるっていう現場があったんだけど、理論的な感じがして、それが印象的だった。愛葉さんの要望に対して、想像して話すんじゃなくまずはやってみる、非常に器用な人。演出面も含め、非常にプロフェッショナルな人だよね。自分が制作するものは、隅々まで目を配らせたいっていう意識があって、プロデュース・ワークが上手いというか、面白いというか。あとね、あんまり接点がないようでいて、道ばたで何回も挨拶してる人っていうイメージがすごいある(笑)。
 

  この曲は単純にポップな曲で、初々しい感じが春っぽいなぁ、と。エルヴィス・コステロは……毒気のないニューウェイヴって感じ(笑)。音楽的にパンク/ニューウェイヴを抽出したポップスの人っていうイメージかな。もしかすると、ものすごい不良かもしれないし、実際はどうか分からないけど(笑)。日本に来た時、学生服を着てライヴをやった写真を見たことがあって、まぁ、可笑しい人だよね。俺の印象だと、大学の音楽サークルに入ってるような人。そこで先輩後輩の酸いも甘いも分かってて、一般的な音楽理論も分かってて、その流れでレコード会社入って……みたいな。俺、一部の層に対して失礼なこと言ってるわけじゃなく、褒めてるんですよ(笑)。


エコーベリーのベスト・アルバム『Best Of Echobelly : I Can't Imagine The World』

  この曲はね……、多分、ヴォーカルのソニアが可愛いんだよ(笑)。声が柔らかくて優しいっていうこともあるけど、この子はインド系で、確か、可愛かった気がする。その印象が桜っぽいんだよね。あとさ、この当時のバンドって、みんな使い捨てにされたから、最近はもう1回ちゃんと聴いてみようかなって思ってる。こういうバンドって中古CD屋で安く売られてるし、どんなバンドだったっけって思いつつ聴くっていう、人命救助的音楽鑑賞にいいかも(笑)。

  ボビーの古巣、ジーザス&メリー・チェインのカヴァーなんだけど、これは単純に嬉しかったというか、新鮮だったし、「ボビーがジーザスに帰ってきた!」っていう感じが花見みたいなんだよね。曲の核になる部分の抽出の仕方が、かつてバンドに在籍したボビーならではで、明暗のあるようなトラックが夜桜っぽい。この曲って、多分さ、レコーディングの前の週に電話がかかってきたとか、たまたま会ったとか、そういう理由でやったのかもね。だって、このカヴァーって、突然すぎるじゃない? あとジーザスって言えば、アメリカの音楽フェスで復活するらしいね。まぁ、再結成っていうより、兄弟ゲンカが収まったっていうことなんだよね。俺、解散ライヴも観たんだけど、その時も「また、この人たち一緒にやるんだろうな」って思ったから。あれ、話がプライマルじゃなく、ジーザスになっちゃったね(笑)。ジーザスは俺の中でデヴィッド・ボウイと同じくらいプライオリティが高いし、ロック・バンドとしての存在感というか、アティテュードが好きというか、自分がバンドをやる時の理想だよね。

iLLなプレイリスト~桜編~

1. 4 NON BLONDES“What's Up”(『Bigger, Better, Faster, More!』収録)
2. コーネリアス“Star Fruits Surf Rider”(『Fantasma』収録)
3. ELVIS COSTELLO“No Action”(『This Years Model』収録)
4. ECHOBELLY“Call Me Names”(『Best Of Echobelly : I Can't Imagine The World』収録)
5. PRIMAL SCREAM“Darklands”(『Shoot Speed(More Dirty Hits)』収録)

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