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第5回 ─ INO hidefumiインタビュー

連載
bounce.com 5th Anniversary
公開
2006/12/22   16:00
更新
2006/12/22   19:01
テキスト
文/bounce.com編集部

bounce.comは2006年12月で5周年を迎えました! その記念企画として、年末年始の4週間、スペシャル・コンテンツを連日更新していきます。第1週はインディーズ特集と題して、2006年に活躍したインディーズ系アーティスト5組のインタビューを掲載! 12月18日より22日まで毎日1組づつ紹介いたします。最終日を飾るのは、〈INO hidefumi〉名義にてフェンダー・ローズをフィーチャーしたインスト作品を発表し、一躍その名を知らしめた男、猪野秀史。今年リリースしたアルバム『Satisfaction』は異例のロングセールスを記録中。メディア上で目にすることの少ない彼に貴重なお話をうかがうことができました。

――猪野さんは今年6月にアルバム『Satisfaction』をリリースされて、ロングセールスを記録しています。発売されたタイミングで取材されている様子がなかったのですが、それは意図的なものだったのでしょうか?

猪野 アルバム・リリースのタイミングで、プロモーションは一切しなかったんです。それまでは7インチレコードを3枚出しただけで、あのアルバムに至るまでにシングルCDを出したり、ライヴをしたこともなかった。ロング・セールスと言われてもあまり実感がないんですよ(笑)。

――カフェや洋服屋なんかでもよく耳にしました。いろんなところで受け入れられた理由は、コアな音楽リスナーは当然として、そうじゃないところにも響いたからなんだろうと思っています。

猪野 コアな人たちだけにうけるものを作るのは簡単だと思うんです。僕が過ごしていた15年くらい前の福岡ではパンク、ハウス、ヒップホップ、レゲエの連中が一緒になって遊んでいた。そういう、いろんな人種がつながっている濃い時間の中で自分が形成されたので、ものを作る上でのバランス感覚は大事にしていますね。

――先日福岡のA.P.Cで行われた初ライヴの告知では、〈B級イージーリスニング〉と書かれているのが面白いと思いました。

猪野 決してA級な音楽ではないんです。宅録だし、高価な機材を使っているわけでもない。でも、ただのイージーリスニングと言ってしまうと誤解されてしまうかなと思いまして(笑)。僕のなかで、〈一般非常識〉という格言みたいなものがあって、常識的なことにとらわれたくないんです。できる限り非常識なことをやりたい。たとえば、音が割れていてもいいと思っている。

――ミックス・ダウンもお一人でされたんですか?

猪野 マスタリング以外は一人でやりました。ミックス・ダウンの工程で音は大きく変わるので、ミュージシャンはエンジニアに丸投げするのではなく、携わるべきだと思うんです。僕は、ジャケットも自分で考えているし、プロモーションについてもコントロールしている。作品に対して、アーティスト自身がどれだけ携わるかが大切なことだし当然だと思っています。

――A.P.Cを設立したジャン・トゥイトゥーさんからの呼びかけで先日のライヴが実現したということですが、ジャンさんも音楽が好きなことで知られている方です。以前、福岡のA.P.Cで店長をされていたときに、ジャンさんから影響を受けたこともあったと思うのですが。

猪野 ジャン本人から最も影響を受けた事のひとつは、無駄をなくすことです。削ぎ落としの美学と言うか……。

――今年は猪野さんにとって、かなり大きな変化があった年だと思いますが、振り返ってみてどのような年だと思いますか?

猪野 『Satisfaction』のような音楽が売れたことはすごく嬉しいし、明るいことだと思っています。僕みたいに何処にも属さず、自分でレーベルを設立して音楽をやっている人は一杯いらっしゃると思うんですが、そういう人たちの励みになればいいですね。大げさにいうと、ムーブメントみたいなものができればいいなと。

――そういった、沢山いる方々と猪野さんとの違いってなんだったのでしょうか?

猪野 やっぱり隅々まで作品に携わることだと思います。僕は、プロモーションとか横のつながりだけで売っているミュージシャンにはなりたくないんです。だから、プロモーションをせずにアルバムをリリースした。音楽だけで勝負してやるぞと覚悟しました。本来ならば音楽ってそうあるべきではないのかなと。そのためにはまず自分が証明することができて良かったと思っています。でもこれは売れたから言えることなんですけれど……(笑)。

――では、来年はどのような活動をしていきたいですか?

猪野 東京でライヴをやりたいですね。あと、セカンド・アルバムを出したいと思っています。それから、ジャンと(藤原)ヒロシさんの3人で作品を作ろうとしているんです。これは必ずやろうと思っています。奇麗事だけでは続かないのは知っていても、できる限り純粋にものを作っていきたいですね。〈自分は腐りたくない〉というスピリットを忘れずにやれればいいと思っています。

▼INO hidefumiのライヴ・スケジュール
2007年1月20日(土) 大阪 BLUE NOTE

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