数あるRPGの中でも熱狂的ファンが多い「MOTHER」シリーズ。その最新作が、前作から8年の時を経て、今年春に発表されたことは記憶に新しいところ。そして今秋――。いよいよそのサウンドトラック盤『MOTHER3+』が登場!! ゲーム自体はもちろんのこと、「MOTHER」の中に広がる世界観のファンなど、さまざまな視点から期待が寄せられた本作には、そんな多くの声への回答と、いい意味での裏切りが内包されている。そこでbounce.comでは、プロデューサーの糸井重里、テーマ曲を歌った大貫妙子、そしてゲーマーを代表してスチャダラパーのBOSEとANIを迎えて緊急対談を決行! ……のはずが、話題はあちらこちらと思いがけない方向へ……。そんな寄り道しまくりのトークを、11月20日より〈ほぼ日刊〉で5日間連続更新いたします(23日の祝日はお休みです)!!
――大貫さんが担当された今回の主題歌“We miss you ~愛のテーマ~”ですが、行間のある歌詞だと思いました。若いミュージシャンの歌詞のように、1から10まで言われていない。
大貫 そもそも、日本語は1から10まで言うのに適していない。〈ド・レ・ミ〉というメロディに、英語だったら〈I love you〉と言えるのに、日本語だったら〈わたし〉で終わっちゃうんですから。
BOSE そうかー。
大貫 日本語では、基本的に俳句みたいに発想するしかないですよね。だから一番困るのが、外国の人にこれを訳してもらう時。書いてある分だけを訳したらすごく単純なものになっちゃう。日本語では行間になってる部分まで訳してもらわないと、バランスがとれない。
糸井 オノ・ヨーコが必要になるんだね。
大貫 そうですね。
糸井 アメリカでずっと暮らしていて、日本語も英語もよく理解している人。〈Love is real, real is love.〉を、〈愛よ〉と言っておしまいにできる人。
BOSE 日本語に訳すとけっこうな分量になっちゃいますもんね。ラップでも、海外のものは必ず主語の〈I(アイ)〉から始まるから、日本語で同じことをやるなら〈オレが、オレが〉になるんだけど、それをいちいち言ってたら日本語だと間に合わない。
糸井 「うるさいな!」ってことになっちゃう(笑)。

BOSE photo by MANABU HAGIRI
BOSE だから日本語の歌詞を作るときは、全部省いちゃう。
糸井 ある意味どうでもいい〈I(アイ)〉を絶対に欠かさないって、すごく規則正しい人たちって感じがするね、アメリカのラッパーって。
BOSE 文法の問題なのかもしれないですけど。日本語の場合、人称を省くことによって、〈自分〉のことを語りながら〈自分たち〉の雰囲気を出すことができるじゃないですか。英語だと、このニュアンスを伝えられない。あと、日本人的な詞の感覚とはかなり違いますし。ラップで自分のことをすごく自慢したり、相手のことをけなしたりというのは、少なくとも日本の歌の文化の中にはない。そういう向こうの感覚をそのまま日本語にのっけても成り立たない。そういうことを言いあうの、日本人って苦手じゃないですか。言うにしても、別の言い方になる。逆にイジワルになることはあるけど、という。
糸井 イギリス人なんかの方が感覚的に近いかもね。
――――スチャダラパーの作品の中には、総理へのメッセージもあります。これは小泉政権の頃に書かれたものですよね?
BOSE そうです。小泉時代は文句ばっかり言ってましたね(笑)。「なんもしないなあ、この人」と思いながら。
糸井 キャラ立ちはよかったけどね(笑)。
ANI 「NO」って言わないと、勝手に「YES」だってことにされちゃう世の中だと思うんですね。
BOSE そう、一応「NO!」って言っておかないと、いつの間にか〈安倍政権、支持率70%〉ってことになっちゃうじゃないですか。「え、オレ支持してないっすけど」という。
大貫 あと、いつも疑問に思うんだけど、〈お茶の間人気投票〉みたいな企画があるじゃないですか。なんで明石家さんまさんが2位にいるんだろうって、いつも思うんです(笑)。

向かって左から大貫妙子、糸井重里 photo by MANABU HAGIRI
糸井 そもそも、その人気投票は何のためにやっているんだろうね?
BOSE あれでなんとなく指針を出してるんだと思いますよ。「さんまさんが人気があります。どうですか?」というような。
糸井 「世間はこうですよ。あなたはどうですか?」という。
大貫 でもあまりにずれてると、ウソだと思っちゃいますよね。
糸井 でも今の方が、前よりズレがなくなってきてると思う。今は、明石家さんまさんのメディアの露出量が一番多いから、その量に対応してるんだな、と思うと合点がいきますよ。他のランクインしてる人もそうなっているから。だからこそBOSEくんの言う通り、なにも言わないと「みんなそう」ってことにされちゃうんだと思う。
BOSE 2位ってことは、ここにいる人のほとんどがさんまさんを好きってことですもんね。それはない(笑)。
糸井 ここにいるみんなって、〈その他〉を選ぶタイプじゃない? 「じゃあ〈その他〉って何よ?」と訊かれても、強く「これです!」って具体的に言える答えはないから、「それならさんまさんにしておけばいいんじゃない?」ってことだと思う。みんながもうちょっと考えたら、回答はもっとばらけるはずなんです。「でもみなさん、考えるの面倒くさいでしょう?」って、パック旅行みたいに考え方もパックして提案してるわけです。「まあみなさん、ざっとさんまさんが好きってことで、いいですよね?」みたいにね(笑)。そしたら、「みんな大好き!」ってことにされちゃう。でも、僕はさんまさん大好きですよ(笑)。実は今、「2位? 1位じゃないんだ?」って思ってたくらいだから(笑)。
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